研究課題/領域番号 |
17H04937
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
片岡 智哉 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 助教 (70553767)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 河川 / 横断分布 / 鉛直分布 / 江戸川 |
研究実績の概要 |
本研究は,河川流況及び流域情報を考慮した河川におけるマイクロプラスチック(MP)の輸送モデルを開発するものである.初年度には,江戸川野田橋(河口から39km)において河川水中におけるMP濃度の横断分布及び鉛直分布計測を行った.なお,MP濃度は橋梁から簡易プランクトンネットを用いて採取したMPの数量と質量をネット開口部に取り付けた瀘水計による計測濾水量で除すことで算定する. MP濃度の横断分布及び鉛直分布観測は平常時を対象とし,横断分布観測を3回(2017/5/31, 7/26, 9/15)と鉛直分布観測を1回(2017/6/22)実施した.MP鉛直分布観測の結果,単位濾水量当たりのMP個数(以下,MP数密度)は,水深が深くなるにつれて指数関数的に減少していた.そこで,浮遊砂量の評価式の一つであるLane-Kalinskeの式に基づき,MP濃度の鉛直一次元拡散方程式でモデル化した.一方,MP数密度は,河川横断方向において両岸で高く,流芯付近で極小値をとるように分布し,水深平均流速と逆相関の関係にあった.流速が大きな流芯付近ではMPが鉛直混合するため,相対的に水表面におけるMP数密度が小さくなったと推察される. MP濃度の横断・鉛直分布によるMP輸送量評価への影響を調べるため,MP横断分布計測結果に基づき,3つのケース(表層1点,表層3点,鉛直平均)でMP輸送量を評価・比較した.表層1点及び3点のケースでは,MP数密度が水深方向に指数関数的に減少する鉛直分布を考慮できていないため,軒並み過大評価された.一方,鉛直平均のケースでは,横断方向における採取点の選択により誤差が生じることがあるが,MP輸送量の評価誤差が相対的に小さい.このことから,MP輸送量評価においてMP鉛直分布を考慮することが重要であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画から初年度は基礎データとしてMP濃度の横断分布と鉛直分布を計測することを予定しており,まずデータを取得することに成功した.これに加えて,MP輸送量を評価する上で,MP横断分布に比べてMP鉛直分布が重要であることが示唆することができた.以上のことから,概ね順調に進展していると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度にMP濃度の鉛直分布を計測したが,計測方法の効率が悪いため,次年度は,MP濃度の鉛直分布の計測方法に関して効率的な方法を考えることを考えている.江戸川におけるMP濃度の横断分布と鉛直分布を計測することに成功したため,今後はこれらのデータを用いてMP輸送モデルの構築に着手する.これと同時にMP輸送モデルを検証するため,別の河川でMP濃度の横断分布と鉛直分布を計測してMP輸送モデルの検証データを取得していく.
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