本研究では,スラム特有の都市秩序の形成,過疎地域における交通サービスの自発的供給といった,自律分散的に都市・交通システムが構築される現象の創発メカニズムを扱う一連の理論的・実証的研究を進めた.研究の結果,個人間の相互作用を扱う社会的相互作用モデルを基礎に,複数種類の主体の意思決定を明示的に反映した相互作用を扱うモデルに拡張可能することで創発メカニズムを一定程度記述できること,一方,創発現象そのものは,複数主体の意思決定だけでなく,それを取り巻く「立憲的選択ルール」,「集合的選択ルール」,「運用ルール」の束に影響を受け規定される可能性が高いこと等が明らかとなった.
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