研究課題/領域番号 |
17H04941
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山村 寛 中央大学, 理工学部, 准教授 (40515334)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Natural Organic Matter / 蛍光分光分析 / 固体蛍光分析 / 膜ろ過 / 膜ファウリング |
研究実績の概要 |
本研究では,自然水中に含まれるNOMについて,固体蛍光分光(solid-EEM)スペクトルデータベースを構築するとともに,solid-EEMを用いた膜ファウリングモニタリングシステムを構築することを目的とした。本年度は,江戸川の水を採水し,水中に含まれる有機物を回収するとともに,回収した有機物を親水性,両親媒性,疎水性に分画した後に,solid-EEM分析に供した。江戸川に含まれる疎水性画分(HPO-edo)は,液体では長波長側に強い蛍光を示した一方で,固体ではほとんど蛍光を示さなかった。HPO-edoの褐色特性により,励起光が吸収され,スペクトルが得られなかったものと推測する。一方で,親水性画分(HPI-edo)は,水中よりも強い蛍光特性が見られた。また,アルブミン(BSA)を測定した時と同様に,新たに長波長側に,solid-EEMスペクトル特有のピークが複数観察された。solid-EEMでのみ観察されたピークは,恐らく凝集によって蛍光強度が強化されるAIE成分,もしくは結晶構造に得意的なピークであると推測される。興味深いことに,分画前の有機物を対象としてsolid-EEM測定を実施した結果,HPO-edoと同様にほとんどピークが検出されなかった。おそらく,サンプル中に含まれるHPO-edo成分によって,HPI-edoの蛍光がクエンチングされたことによると推測する。今後,さらに多様な水域について同様の分析を実施することで,NOM特性がsolid-EEM分析に及ぼす影響を明らかにしたい。 光ファイバーを接続したSolid-EEM分析装置を用いて,淀川表流水を連続膜ろ過している最中の膜表面のEEMスペクトルを連続的に観察した結果,膜ファウリングの進行にともなって,スペクトルが連続的に変化する様子を観察することに成功した。今後は,得られたデータの定量的な解析方法を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,(1)河川水中のNOMを回収する手法を確立すること,(2)1種類の河川水について,solid-EEMスペクトルデータを得ること,(3)連続モニタリングシステムを構築することを目的として研究を実施した結果,ほとんどすべてを予定通りに実行できた。 特に,NOMの回収,特性分析にあたっては,多くの装置が必要となり,半年をかけて機器の導入とセットアップに時間を費やした。また,有機物の分画もXAD樹脂の洗浄に時間がかかかったが,前期の内にすべての準備を整えることに成功した。 後期に,江戸川を採水し,有機物の分画が実施できることを確認している。概ね予定どおりに進んでおり,研究も順調に発展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は想定通り,河川水を用いた実験でも,液体と固体のEEMスペクトルが異なることが明らかになり,今後も昨年度と同様に,異なる水域を対象としてNOMを回収し,solid-EEMスペクトルのデータベースを充実していきたい。特に,今年度は,湖沼,清澄な河川,都市下水を多く含む河川の3箇所について採水し,親水性・疎水性画分についてsolid-EEMスペクトルを得たい。 Solid-EEMによる膜ファウリングセンサーの開発については,今年度は,昨年度取得したデータの整理方法を検討するとともに,得られたデータを定量化する手法を確立したい。また,水域を変えてろ過試験を実施することで,センサーによる膜ファウリングの有効性を確認する。 これまでに得られたデータをまとめて,今年度は論文に投稿し,solid-EEMによる膜ファウリングについて,国際誌に発表したい。
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