研究課題/領域番号 |
17H04943
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山崎 義弘 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (70644425)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 筋かい耐力壁 / 合板耐力壁 / 性能劣化 / 等価減衰定数 / 繰り返し地震動 / 累積損傷 |
研究実績の概要 |
昨年度の実験により、任意の載荷履歴を受ける木造耐力壁(筋かい耐力壁および合板耐力壁)のせん断力-変形角関係の包絡線を予測する手法を提案した。本手法は、静的載荷実験の実験結果に対して同定したパラメータを使用していたため、動的載荷時の挙動に対する適用性は不明であった。そこで今年度は振動台実験を実施し、提案手法の適用性を検証するとともに、エネルギー吸収性能、すなわち等価減衰定数の評価式を新たに提案した。 振動台実験では、継続時間の長い地震動(八戸波)と短い地震動(神戸波)の位相特性を用いた模擬地震波を用い、それぞれを繰り返し入力したときの最大応答変位の増大の傾向、およびせん断力-変形角関係への影響を調べた。両地震波の応答スペクトルを同程度に設定したため、弾性域では両地震波に対する最大応答変位は同程度となったが、塑性域では八戸波の方が最大応答変位の増大が急激であった。これは八戸波の継続時間が長いことにより応答サイクル数も多くなり、耐力およびエネルギー吸収性能の劣化が著しかったためであり、昨年度の静的載荷実験結果に矛盾しない。上述の弾性域と塑性域の閾値、すなわち弾性限界は、概ね終局変形角の1/3であることが明らかとなった。また、振動台実験で得られたせん断力-変形角関係は、載荷速度や境界条件の違いに起因し、静的載荷実験のせん断力-変形角関係より10~20%程度上昇することを確認し、この影響を踏まえた上で既提案の評価式を適用すれば、振動台実験のせん断力-変形角関係も概ね精度良く予測できることが分かった。等価減衰定数については、経験サイクル数より、経験最大振幅への依存性が強いことを見いだし、これを指標とした実験式を導出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたとおり、動的載荷時の耐力とエネルギー吸収性能の劣化傾向を記述する評価式を構築することができた。これにより、本研究の最終目標である応答スペクトル法への適用に必要な、実験に基づくデータ取得は概ね完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
応答スペクトル法への適用にあたって実験に基づく下準備が完了したため、よりパラメトリックな検討に必要な数値解析モデルの作成に取り組む。まずは本研究で提案した、任意の載荷履歴を受けたときの耐力およびエネルギー吸収性能の劣化傾向の評価式を、既往の時刻歴解析用復元力特性モデルに取り入れ、振動台実験結果を数値解析により再現できるようにする。これが可能となれば、実験で入力とした2波以外の、より様々な入力波に対するシミュレーションが可能となる。また、応答スペクトル法に適用するには、最大応答変位に至るまでの振幅の分布を調査する必要があるため、上述のモデルを用い、多様な地震波に対してシミュレーションを実施する。最終的には、地震動の継続時間と、それを入力としたときの応答振幅分布の間の相関を見いだすことで、応答スペクトル法の計算で必要となる等価剛性(周期)と等価減衰定数の評価を可能とし、地震動の継続時間の違いによる影響を反映させる。
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