本年度では、昨年度に製作した角形鋼管の鋼柱材を対象とし、高軸力比における曲げ耐力や塑性変形性能を載荷実験で検証した。実験セットアップの仕様に応じ、高軸力を受ける試験体の断面は、最大で実大の1/6スケール程度であった。スケール効果を検討するため、低軸力を受ける実大の1/3スケールの試験体も用意した。角形鋼管断面の幅厚比を25と35の2種類を選択し局部座屈を、0°と45°方向に載荷し応答の方向依存性を、0.2と0.8の軸力比を採用し塑性化後の挙動を検証した。 実験結果より、1/6スケールの試験体の荷重変位関係は、1/3スケールの試験体とほぼ同等で、スケール効果はほぼなかった。載荷方向が応答に与える影響は限定的であった。0.8の軸力比を受ける試験体の耐力は、局部座屈を生じたのち徐々に低下したが、0.2の試験体は局部座屈を生じた後の耐力劣化は僅かであった。高軸力比の場合、局部座屈が材端から離れた位置に生じる等、低軸力比とは異なる鋼柱材の応答が見られた。 以上の載荷実験で得られた結果を、申請者らが提案してきた、鋼柱材の局部座屈による耐力劣化を表現できるファイバーモデルで再現することを試みた。ファイバーモデルは、要素数が相対的に数十倍から数百倍多い有限要素解析と比較して遜色なく、繰返し載荷を受ける鋼柱材の挙動を追跡できた。ファイバーモデルと実験結果の応答とを比較すると、両者は最大耐力時点まで概ね対応したが、局部座屈による耐力劣化について乖離していた。これは、弾塑性特性の構成則に依存しており、改善の余地があると考えられる。 同ファイバーモデルを、時刻歴応答解析プログラムに組み込み、鋼柱材の局部座屈により崩壊した4層鉄骨造骨組の振動台実験を、再現することを試みた。1層目の柱材が局部座屈を生じた時期や、耐力劣化により骨組全体の変形が大きくなる挙動を、同プログラムでほぼ捉えることができた。
|