研究課題/領域番号 |
17H04949
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
譯田 真人 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (00550203)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 合金 / 結晶化 / 原子シミュレーション |
研究実績の概要 |
平成29年度は,金属材料を対象とした過冷却液体からの結晶化を扱うための時間拡張原子モデリングの基盤,および核形成過程に着目した結晶化プロセスの支配因子の検討を行った.対象としたのは2元系合金である.経験的原子間相互作用ポテンシャルに基づく分子動力学シミュレーションを用いて,2元系合金の高温過冷却液体中での結晶化プロセスを調べた.過冷却液体中に存在する結晶核サイズによって成長や消滅などの挙動は異なる.複数種の2元系合金の結晶核について,幾何学形状,および液体―固体界面に関する原子論的知見を獲得した.対象とした合金は液体から急冷することでアモルファス固体として得られることが知られている.アモルファス合金では過冷却液体合金中で結晶化が起こりにくいことから非晶質固体として得ることができるが,原子スケールでの振る舞いを支配する因子については議論が続いている.過冷却液体合金中の結晶核の解析から得られた原子論的知見は,アモルファス合金が結晶化しにくい要因,すなわち金属の結晶化を支配する因子を理解するうえで有用な情報となる.また分子動力学法から得られる過冷却液体合金中の結晶核に関する知見は,結晶化の初期段階のエネルギー論的な情報をもつ.このため分子動力学解析から得られた原子論的,エネルギー的知見は,金属材料の結晶化プロセスを対象としたエネルギー論に基づく時間拡張原子モデリングを行う際に活用することが可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で対象とする時間拡張モデリング手法について,理論および手法の基礎的検討を行うことができた.また2元系合金の過冷却液体状態について,結晶化の初期プロセスに関する原子論的知見を獲得することができた.このことからおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は液体合金の結晶化を対象とした時間拡張原子モデリングの基礎的枠組みについて検討を実施した.今後は過冷却液体合金中の結晶核に関する統計的解析を実施することで,結晶化の初期段階をエネルギー論に基づき評価する枠組みを構築する.また対象とする合金を増やし,金属材料の結晶化プロセスの支配因子についても原子論に基づく検討を進める.
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