研究課題
酸窒化物は、大気中の主要元素である酸素と窒素によって物質の電子構造を自在に制御することができ、新規材料開発においてますます注目されている。本研究では、申請者らが開発した固体源のアミドを用いた酸化物の低温窒化法を用いて、酸素と窒素の量によって電子構造を精密に制御した酸窒化物の粉末や薄膜の合成を行うこと、およびそれらの化合物の新たな機能性を引き出すことを目的としている。初年度は新規酸窒化物粉末合成として、出発原料の検討を行った。ナトリウムアミド、水酸化物、塩化物を混合することで、ペロブスカイト型酸窒化物の合成に成功した。混合方法や出発試料の混合比を変化させることで、反応の最適化をおこなった。この反応は瞬間的に起こり、急激な発熱を伴う反応であることを、反応の直接観察及び熱力学的考察より明らかにした。また、有機溶媒を加えることで出発原料の混合を均一化することができ、不純物相が少ない合成手法の開発にも成功した。これらの研究成果は、学術論文として発表された。また、薄膜合成においては、合成した酸化物の薄膜とナトリウムアミドの処理によって膜の窒化を試みたが、薄膜が剥げてしまい窒化することはできなかった。そこで、室温プラズマ処理による窒化を行い、窒素が膜中から検出されたことから低温での窒化が成功した考えられる。電子移動度やキャリア濃度が変化していることから、窒化処理によって電子構造が変化したと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
水酸化物、塩化物とナトリウムアミドの反応を用いた酸窒化物の合成に成功した。これらの反応は、新たな反応場としての展開が期待できる。また、酸化物膜の合成およびその低温窒化に成功した。すでにこれらの成果の一部は、学術論文として公開されている。さらに、窒化物の前駆体としてインジウムカルコゲナイドの探索も並行して行っており、これらの研究は期待以上に進行している。その一方で、本年度は予期していなかった新たな反応場が見つかったため、酸化物とナトリウムアミドとの反応機構を詳細に調べるための実験が若干遅れている。研究計画全般としては、今年度の知見を活かして来年度以降の研究を行えることから、研究はほぼ順調に進行しているといえる。
研究計画二年目にあたる本年度は、新規反応場の探索、反応機構の解明、また電気化学触媒としての評価に重点を置き、研究を進めていく予定である。新規反応場としては、溶媒中での反応にも着目し実験を進めていく。反応機構の解明に関しては、粒径やカチオン・アニオン比を変えた出発試料の窒化反応を行うことで、窒化反応に重要な因子を特定し、合成機構を提案する。また、酸素還元触媒能の評価に向けての準備がすでに整っているので、本年度は合成した酸窒化物の評価をすすめ、組成・電子構造・機能性の関連性を調査する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (4件)
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