研究課題/領域番号 |
17H04952
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北條 元 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90611369)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分極回転 / 圧電体 / 強誘電体 / 薄膜 / マルチフェロイック |
研究実績の概要 |
強誘電体・圧電体は不揮発性メモリやアクチュエーターなど様々な用途で実用化され、我々の生活を支えている。代表的な材料はペロブスカイト型酸化物PbZrO3とPbTiO3の固溶体Pb(Zr,Ti)O3であるがPb(鉛)は環境・人体に有害な元素であるため、世界各国でその規制が進められている。このような状況のもと、非鉛の代替材料の開発が求められている。 本研究では「分極回転」を利用することで、巨大な圧電応答を示す非鉛圧電体薄膜を実現することを目的としている。2016年に代表者らが報告した、単斜晶構造を有する(001)配向のBiFe1-xCoxO3薄膜における、分極回転機構により圧電特性が向上するという知見をベースとして、分極回転の効果を最大化するための材料設計を行う。 昨年度までに(101)配向の単斜晶BiFe1-xGaxO3薄膜の作製に成功しており、(001)配向の薄膜に比べて、圧電特性が向上することを見出している。 一方、本研究を進める過程で、BiFe1-xCoxO3薄膜においては室温で強誘電性に加えて、弱強磁性が発現することを見出した。今年度は、特にこの性質に着目し、強誘電性秩序により発生する電気分極と弱強磁性の相関を詳細に調べた。結果、電場による磁化反転を実証することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究により、すでに分極回転に基づいた材料設計により、実際に圧電特性が向上することを確認できている。さらに今年度は室温で強誘電性と弱強磁性が共存したBiFe1-xCoxO3薄膜において、電場による磁化反転を実証することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き、種々のペロブスカイト型基板の(101)面および(111)面上へのBi系圧電体薄膜の作製を行い、その圧電特性の評価を行う。 また、これまでに作製に成功しているLaAlO3(101)基板上の巨大なc/a比を有したBiFe1-xGaxO3薄膜については、その詳細な結晶構造解析のため に透過型電子顕微鏡による観察を進める。特にこの薄膜については帯電ドメインが形成されている可能性があるので、原子変位を含めた詳細な 詳細な結晶構造解析を行うとともに、走査型プローブ顕微鏡を用いた電流マッピングによるドメイン壁での電気伝導性の有無の確認も並行して行う。
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