研究実績の概要 |
本研究を進めるうえで異常クーロン力空間の根拠となる我々の論文が平成29年度Nature Materials誌に掲載された(R. Futamura 他, Nature Mater. (2017) 16, 1225-1231)。1分子サイズのカーボンナノ細孔中においては、電気伝導性を有する細孔壁による静電遮蔽効果によりイオン間のクーロン力が軽減されるため、磁性イオン同士が近距離でも高密度で存在し、磁気相互作用により配列することが期待できる。この静電遮蔽効果はナノカーボン材料の有する細孔径とイオンのサイズの関係に非常に敏感に依存することが最近の研究で分かってきた(二村竜祐 他, 日本化学会第98春季年会)。これらについてさらに詳細に検討中である。 本研究の成功に向け平成29年度の11月にイメージングプレートXRD装置(15,984千円)を導入し、微小量のサンプル(<1 mg)でも構造解析が可能となった。これによりカーボンナノチューブ(CNT)-磁性イオン液体複合材のサンプル調製とキャラクタリゼーションのサイクルが効率化できるようになった。現在本研究費により購入したカーボンナノチューブと磁性イオン液体を用いて複合材の調製、構造解析を試みている。 CNT-磁性イオン液体複合材を用いて配向膜を作るために、磁場下での膜調製が可能なセルを作る必要がある。そのために必要な治具等を開発できる3Dプリンターを購入した。3Dプリンターは非磁性のポリマーを融かして目的の形を作るため本実験でのセル作成に適している。今年度磁場下でサンプル調製できるセルを設計した。これを用い、CNT-磁性イオン液体複合材による配向膜の調製を試みる。
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