研究課題/領域番号 |
17H04954
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
多賀谷 基博 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20621593)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ナノバイオセラミックス / セラノスティクス粒子 / メゾ多孔質構造 / 多孔質水酸アパタイト / 層状リン酸八カルシウム / 希土類イオン / バイオイメージング素材 / ナノバイオ材料 |
研究実績の概要 |
微小腫瘍を細胞レベルで非侵襲に検出して治療する技術が必要である。そこで,本研究では,蛍光内視鏡を用いて生体内のがん細胞を非侵襲・高感度に検出して死滅させる目的で,生体親和性と発光特性に優れたメゾ多孔質バイオセラミックナノ粒子を新規に創製し,分子修飾技術を駆使し,細胞レベルで腫瘍部位を可視化する技術へ応用するものである。 当該年度 (西暦2018年度) においては,細胞結合分子の修飾方法を確立した。細胞結合分子として,がん細胞表面に超過剰発現する葉酸受容体を標的とした葉酸分子,及び,HER2受容体を標的としたHER2抗体を用いた。表面修飾技術は既に申請者等が検討してきたため,円滑な開発が実現した。具体的に,液相反応により3-アミノプロピルシランをナノ粒子表面へ結合形成させ,最表面へアミノ基を露出させた。次いで,アミノ基と細胞結合分子内のカルボン酸の脱水縮合反応により,細胞結合分子をナノ粒子表面へ共有結合を介して形成させた。その結果,がん細胞へ特異的に結合・取込が効果的な修飾分子の密度 (分子専有面積) が分かった。同時に,特定の修飾分子専有面積において,ナノ粒子表面近傍に偏在する発光種と光誘起エネルギー移動を示すことが分かった。さらに,HeLaがん細胞に対して特異標識特性を見出した。つまり,「生体安全性」と「がん細胞への選択的な取込特性」が確認され,蛍光内視鏡によって高感度に微小がん部位を検出できる可能性を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度 (西暦2018年度) において,当初の予定どおり,ナノ粒子表面への細胞結合分子の修飾方法を確立した。特に,ナノ粒子メゾ構造骨格(光機能性部)と細胞結合部(表面修飾分子)の協奏によってイメージング特性が飛躍的に向上した成果は予定以上の成果であり,申請者及び申請者の研究室学生が一丸となって研究へ邁進したことに由来する。同時に,科研費による研究の立上と推進が加速したためでもある。更に,研究実績の概要で述べたように,生体に類似な穏和な条件で光機能性のメゾ多孔質バイオセラミックナノ粒子の創製に世界で初めて成功した点は,新規性と進歩性共に評価される。 以上の成果は,Results in Physicsをはじめとする著名な雑誌へ多数掲載されおり,研究協力者である大学院生が2件も受賞するなどの研究・教育業績に至っており,成果発信についても十分に達成したものと評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
日本は,世界でも類をみない高齢社会を迎えている。国民が健康で安心して暮らせる社会を実現すべくナノテクノロジーが関わるバイオ・医療分野の革新的材料開発が重要になる。本研究では,生体に類似な穏和な条件でメゾ多孔質バイオセラミックナノ粒子を合成し,高次構造形成技術と表面・界面制御技術の融合によって生体親和性と発光特性に優れたナノ粒子として応用展開を推進してきた。その結果,有用なバイオイメージング特性を見出した。 今後,抗がん剤をメソ細孔へ坦持したナノ粒子のメソ細孔口を光応答性粒子によって封止複合化し,超早期がん細胞内で光誘起薬物放出を実現し,治療技術を革新する。すでに,予備実験を進めており,HeLaがん細胞に対しての特異標識特性と治療の可能性を見出してている。次年度 (西暦2019年度) は,抗がん剤 (パクリタキセル,イソプロフェン,等) を坦持したナノ粒子を用い,抗がん剤の光誘起放出技術を実現する。光照射に伴った表面電位変化をゼータ電位測定により評価し,光照射時間と表面電位の関係を見出し,光誘起放出開始時間を決定する。 以上により,生体親和性に優れたバイオセラミックスとメゾ細孔構造 (骨格と表面) を協奏し,超早期がんの革新的非侵襲診断・治療技術へ応用展開する予定である。そして,細胞レベルで非侵襲・高感度に腫瘍部位を光検出して治療するための技術として実用する。研究を進化・深化させ,バイオ・医療分野へ貢献し,日本の超少子高齢社会をより良く豊かにする信念により,更に本研究活動へ邁進する予定である。
|