微小腫瘍を細胞レベルで非侵襲に検出して治療する技術が必要である。そこで,本研究では,蛍光内視鏡を用いて生体内のがん細胞を非侵襲・高感度に検出して死滅させる目的で,生体親和性と発光特性に優れたメゾ多孔質バイオセラミックナノ粒子を新規に創製し,分子修飾技術を駆使し,細胞レベルで腫瘍部位を可視化する技術へ応用するものである。 当該年度においては,平成29年度と令和元年度に創製したナノ粒子の細孔内へ抗がん剤を担持し,本研究で見出した知見「ナノ粒子の超早期がん細胞への選択的取込」を活かし,がん細胞内のみで光誘起薬剤放出によって死滅・根治させる技術を開発する。先ず,抗がん剤 (パクリタキセル,イソプロフェン) を坦持したナノ粒子を用い,抗がん剤の光誘起放出技術を実現する。その方法は,光 (波長420 nm) 照射により分子内開裂して電荷が正から負へ変化する光応答分子 (PM) を用いて行った。具体的に,申請者等が合成した金ナノ粒子の表面へチオール基を介してPMを修飾してPM金ナノ粒子を得て光誘起放出開始時間を決定した。次いで,ナノ粒子のメソ細孔口をPM金ナノ粒子によって封止複合化して光照射によりメソ細孔口を開けて抗がん剤を放出させて徐放性能を見出した。以上によって,超早期がん細胞に対する非侵襲治療を実現した。つまり,「生体安全性」と「がん細胞への選択的な治療特性」が確認され,蛍光内視鏡によって高感度に微小がん部位を治療できる可能性を見出した。
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