研究課題
本研究の目的は、チタン基形状記憶合金のマルテンサイト相における原子シャッフリング量を調整することで活動する転位すべりを制御し、高性能形状記憶合金の開発指針を示すことである。研究代表者が新たに発見したすべり系はマルテンサイト相における原子シャッフリングと強い相関関係があることが予想される。そのため、本研究ではまずマルテンサイト相における原子シャッフリングと転位すべりとの関係を定量的に解明し、次にその知見を用いて活動する転位すべりの制御と形状記憶特性の高性能化を目指す。本年度は(1)単結晶試料の作製と(2)作製した単結晶試料における機械試験、(3)原子シャッフリング量の定量化のため結晶構造解析環境の構築を行った。(1)光学式浮遊帯域溶融法(既設装置)を用いて単結晶試料を作製した。これまでに研究代表者らが蓄積したノウハウをもとに、計画どおりのサイズ(直径10mm、長さ150mm)で良質な単結晶試料を得ることに成功した。(2)作製した単結晶試料を精密切断機を用いて切断加工し、室温で機械試験(圧縮試験)を行った。その結果、目的通り超弾性が発現することを確認した。また、圧縮変形中のその場組織観察(光学顕微鏡、走査電子顕微鏡および後方電子線回折測定)を行い、作製した単結晶試料において活動するすべり系を同定した。(3)本研究では原子シャッフリング量の定量化のため、ガンドルフィカメラとX線回折装置を用いたリートベルト解析を予定している。本年度は装置導入および測定環境の整備を行った。また、ガンドルフィカメラ用の試料は直径100マイクロメートル程度である必要がある。そこで本年度は、このような微小試料をバルク試料から作製する方法の検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
現在のところ、当初の計画通りに研究は進展している。特に単結晶試料の作製とガンドルフィカメラを用いたリートベルト解析用試料の準備が滞りなく進展した。
今後の研究については、まず当初の計画通りマルテンサイト相における原子シャッフリング量の定量化を進める予定である。また、単結晶試料における引張試験も計画している。圧縮試験で得られた結果と対比させることで、活動するすべり変形とシャッフリング量の関係をより明確にすることができると考えている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 20件、 招待講演 1件)
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