2019年度は下記の項目について検討した。 I. 液液界面接触法による脂質二分子膜の形成: 前年に引き続き、製膜方法について検討した。前年度に確立した手法により作製した、表面細孔径が制御された多孔質支持体を用いて製膜を行い、脂質二分子膜の組成や脂質濃度、水チャネルの種類(Gramicidin A、Amphotericin Bなど)、導入量などの脂質膜の構成因子が膜性能に与える影響を評価し、製膜条件の最適化を行った。また、更なる透水性向上を目指し、脂質膜の形成方法などについて再度検討を行った。これらの検討結果により、逆浸透膜として、市販の高分子系膜や既往のAquaporin系膜よりも高い透水性を達成することができた。 II. 物理的・化学的強度の付与: 脂質二分子膜の安定性向上を目的とした高分子保護層の導入方法について検討し、高分子表面へ平面的な脂質二分子膜を形成するための高分子の分子構造などに関する知見が得られた。 III. 実用化に向けた課題抽出: 逆浸透膜として実プロセスで必要とされる、耐圧性評価などの検討を行い、高い透水圧においても膜性能は安定であることを確認した。また、大面積化においては、脂質二分子膜をより効率的、経済的に形成させる必要があり、製膜時に用いる脂質溶液濃度の低減や二分子膜形成促進因子の添加などについての検討も行った。 以上、本研究の成果により、既存の高分子系膜を超える性能を有する逆浸透膜が作製できることがわかり、生体模倣型逆浸透膜の実用化に向けて大きく前進した。得られた成果については、国内外での学会や、論文、特許出願などの形で発表を行った。
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