研究課題/領域番号 |
17H04969
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
岡本 章玄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (70710325)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞外電子移動 / プロトン移動 / 外膜シトクロム / フラビン / 鉄還元細菌 |
研究実績の概要 |
近年の遺伝子工学技術の発達に伴い、細菌の代謝を用いた数々の有用なバイオ合成プロセスが開発されているが、その反応速度を向上させる方法論は限られてい る。申請者らは細胞外の電極と電子のやり取りをして呼吸を行う「発電細菌」において発電時に発酵反応が進行していること、ならびにこの「発酵的呼吸」が駆 動される際の律速過程が、細菌/電極界面で電子移動と共役するプロトン移動であることを見出した。本研究では、プロトン移動を加速することで大腸菌と言った 物質生産のモデル細菌おいて代謝速度を電気化学的に加速させることを目指す。 本年度は、モデル発電細菌Shewanella oneidensis MR-1を用いてフラビン等の小分子群がプロトン移動速度を加速させる機構を検証した。これまでの検討からフラビンと類似した構造を有し、外膜シトクロムに非共有結合性の反応中心として働く、小分子複数を用いて電気化学解析を行うと、酸化還元電位との直接の相関は見られなかったが、イソアロキサジン環のN5原子の求核性と良い相関を示した。このことは、N5にプロトンが付加することが重要な速度因子であることを示している。実際に、重水を電流生成中に添加すると、小分子を置換すると有意に異なる同位体測度論効果が観測された。これらの結果は、N5へのプロトン付加が細胞外電子移動の律速過程になっていることを示している。この成果は、N5の求核性を制御することで細菌の代謝反応速度を増加させることが可能であることを示しており、本研究の目的において重要な成果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、フラビンなどの小分子においてN5の求核性を制御することで細菌の代謝反応速度を増加させることが可能であることを明らかにした。この知見は同様に外膜シトクロムを持つ遺伝子変異大腸菌においても適用できると考えられ、電気化学的に大腸菌の有用物質生産を加速することが出来ると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り来年度からは、細胞外電子移動のモデル細菌であるShewanella oneidensis MR-1から得られたプロトン移動を加速させるための知見を大腸菌へと適用するための検討を始める。遺伝子変異を行った大腸菌をすでに獲得しており、培養にも成功しており、電気化学や分光系へと展開できる。
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