研究課題
本研究では、申請者らが発見した「Shewanellaによる電極上での発酵代謝の高速駆動」において鍵となる「細胞外プロトン排出」の微生物学的 、電気化学的解析を行い、その分子機構の解明、ならびにモデル系(大腸菌)での電極による発酵反応の高速化を実証する。本年度は、遺伝子改変によって細胞外電子移動能を獲得した大腸菌株を用いて、膜タンパク質におけるヘム反応中心間の相互作用ならびにプロトン移動の相関を調べた。遺伝子発現を誘導して膜タンパク質の細胞表面濃度を変化させるとヘム間相互作用が大きく変化し、それに伴って電流生成速度も増加した。電子伝達タンパク質間の膜上での相互作用が大きく電子移動速度に影響を与えることは初めて確認された。また、脂質二重膜の組成も膜タンパク質の構造を変化させ、ヘム反応中心間の相互作用を変化させることが明らかになった。当初予想していなかった生細胞特有の動的なタンパク質特性は、電流生成の新しい制御法となることが考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画していた遺伝子改変した大腸菌の実験が上手く進み、生細胞に特有の電子移動速度の制御因子が見出された。また、鉄還元細菌の遺伝子を網羅的にスクリーニングすることが可能なハイスループット電気化学測定系が完成したため、今後新たな遺伝子レベルの知見が得られることが見込まれる。
引き続き、遺伝子改変した大腸菌における電子移動速度を向上させるための研究を行っていく。次年度は特にプロトン移動動力学を制御する小分子を使った実験を行い、大腸菌の代謝反応の大幅加速を目指す。さらに、遺伝子破壊株ライブラリを用いることで、電子移動速度に支配的な影響を及ぼす遺伝子を網羅的に特定し、特に重要な物に関しては、その機能解明を行う。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 備考 (2件)
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