一般に原油の回収率は20-60%であり、枯渇油田とされてもその多くは地下に残されている。この原油をメタンに変換し、天然ガスとして回収する技術の開発を目指し、一部の深部地下油層環境で起きていることが示唆されている生物的原油分解メタン生成反応のメカニズムを解明することを目的としている。平成29年度は原油分解メタン生成培養系の構築を行った。 これまでに原油の炭化水素組成分析(原油の生分解度)やCH4~C4H10およびCO2のガス成分の安定同位体比分析(メタンの生成起源)などの地球化学的観点から、山形県と秋田県の2カ所の油田で原位置の原油分解メタン生成ポテンシャルの存在を確認してきた。本年度は、山形県および秋田県の油田の3坑井から採取した原油と油層水および孔隙を模擬する滅菌海砂を用いて、深部地下油層環境を模擬する高温高圧連続培養システムにおいて、油層のメタン生成プロセス再現のための培養実験を行った。さらに、高温常圧連続培養器を用いて、原油を添加する系と、原油の代わりに基質としてC10~C20の中の複数のn-アルカンまたは脂肪酸を添加する系を設定して培養を行った。この培養器にも油層環境を模擬するための海砂を用いている。これは微生物の住処としてだけでなく、水に浮いてしまう原油を砂に付着させ、微生物への接触効率を上げるのに役立つものである。原油の微生物による分解度を確認するため、原油に含まれるn-アルカン、i-アルカン、芳香族炭化水素成分を測定し、メタン生成確認後の原油成分の組成変化を確認した。一つの坑井から採取した油相水を用いた原油添加培養系およびn-アルカン添加培養系からメタン生成を確認した。
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