油田における原油の回収率は概して20-60%であり、枯渇油田とされても原油の大部分は地下に残されている。この残された原油をメタンに変換し、天然ガスとして回収する技術の開発を目指し、深部地下油層環境の一部で起きていることが示唆されている生物的原油分解メタン生成メカニズムを解明することを目的としている。これまでに、原油の生分解度を推定する炭化水素組成分析やメタンの生成起源を推定する、メタン~ブタンおよび二酸化炭素の安定同位体比分析などの地球化学的手法により、山形県と秋田県の2カ所の油田に原油分解メタン生成ポテンシャルがあることを確認した。本研究では、現地環境を模擬した高圧培養および常圧培養を行い、原油分解メタン生成培養系の構築を行った。さらに、原油分解過程の中間代謝産物であると想定される脂肪酸を用いてメタン生成培養系の構築を行った。この炭素数が10から20の比較的長鎖の脂肪酸を基質とした培養を行ったところ、良好なメタン生成が確認された。そして集積された微生物について16S rRNA遺伝子塩基配列を解析し、関与しているメタン生成菌および細菌の種類を明らかにした。脂肪酸を用いた培養系の中に、原油分解メタン生成培養系において優占する新規微生物が優占していることが明らかとなった。また、脂肪酸の炭素数により、メタン生成の抑制が起こるものがあることを明らかとした。基質の検討の結果、原油分解メタン生成培養系で優占する微生物を安定的に培養できる脂肪酸を明らかにし、門レベルで新規な微生物の集積系の獲得に成功した。これらの結果により、地下深部におけるメタン生成メカニズムの一部を解明した。
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