研究課題/領域番号 |
17H04971
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松岡 健 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (40710067)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パルスデトネーションサイクル / レーザー点火 / 液体燃料 |
研究実績の概要 |
本研究では,デトネーション波を間欠的に生成するパルスデトネーションサイクル(PDC)に着目し,相転移を用いた低温爆発性混合気充填法の確立とレーザー点火技術によるデトネーション遷移過程の最短化を組み合わせることで気体力学的上限周波数で作動するPDC(燃焼器全長120 mm で1500 Hz)を実証することを目的とする.本年度は主に2つの研究を実施した. 1.燃焼器内部流動の理解とモデル化 本研究の独自手法である準バルブレスPDC(特願2015-251952)における燃焼器内部流動をシュリーレン光学観測および自発光観測によって可視化した.その結果,PDCにおける全過程(爆発性混合気の充填、点火・デトネーション波への遷移(DDT)、高圧既燃ガスの排出、酸素による既燃ガスの掃気)をx-t線図(一次元的な流動)として表現することに成功した.この成果により,気体力学的上限PDCへの課題として,DDT短縮および掃気用酸素層の排除が必須であることが明らかになった.また,最高繰り返し周波数として,燃焼器全長40 mmで1916 HzのPDC作動を達成した. 2.火花点火の特性評価とレーザー点火装置の導入 上記一つ目の課題であるDDT短縮に対して,レーザー点火装置を導入した.レーザー点火の有効性を確認するため,まず従来の点火手法である火花点火がDDT過程に及ぼす影響を調査した.その結果,エチレン-酸素混合気におけるDDT時間が0.1ミリ秒以下であるのに対して,火花点火におけるエネルギー投入時間は1ミリ秒程度と大きいことが示された.本年度は,導入したレーザー点火装置(エネルギー投入時間0.00001ミリ秒、最大投入エネルギー200 mJ)による点火,DDT可視化実験を実施し,火花点火におけるDDT過程との差異を調査し,レーザー点火の有効性(高密度エネルギー,高圧環境下での点火)を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最終目標である気体力学的上限PDC(焼器全長120 mmでの1500 Hz)に対して,本年度,40 mm燃焼器による1916 Hzを達成した.この作動周波数は,燃焼器全長で決定する気体力学的上限周波数に対しておおよそ75%であった.上限周波数に近づけるためには,レーザー点火によるDDT短縮と低温爆発性混合気による自着火抑制が必要であり,本研究の今後の課題である.しかしながら,ピエゾインジェクタによる高速燃料噴霧および従来の火花点火による1916ヘルツの達成は,当初の計画以上の進展である.上記課題を克服することで,20 kHz以上(超音波)でのPDCが可能であることが示唆され,空気中強力超音波としてのPDCの新しい工学応用も期待される. PDCや回転デトネーションサイクル(RDC)とは異なる全く新しいデトネーションサイクルとして反射往復型デトネーションサイクル(RSDC)を提案した(特願2017-232418).RSDCは,デトネーション波が扇形2次元燃焼器内の壁面で反射を繰り返しながら伝播を維持する.これまでに,可視化実験にて一定速度(超音速)で往復伝播する燃焼波を確認している(Proceedings of The Combustion Instituteにアクセプト済み).RSDCは,反射衝撃波後方の高圧状態と燃焼によってデトネーション波伝播を維持していると考えられ,薄い平板形状の燃焼器内でもデトネーション波を維持できる.今後,その伝播メカニズムや推進性能を評価する予定である. 以上の2点から,当初の計画以上にしていると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,平成29年度に整備したレーザー点火実験を本格的に実施し,DDT時間・距離の短縮を実験的に確認し,10 マイクロ秒のDDT時間,5 mmのDDT距離を達成する.また,-30℃まで冷却可能なチラーと燃料インジェクタジャケットによる低温爆発性混合気の生成実験を実施する.燃焼器内へ噴霧する液体燃料温度(蒸発潜熱)を制御し,自着火に至る時間を可視化実験で計測する.自着火時間よりも混合気充填時間を短くすることで,パージ過程を排除した理想的なPDC作動(混合気充填→点火・デトネーション波伝播→高圧既燃ガス排出→混合気充填)を達成する.以上の2つの研究成果として,燃焼器長さ10 mmでの5 kHzを達成する. PDC研究と並行して,反射往復型デトネーションサイクル(RSDC)のメカニズム解明を目指す.混合気パラメータ(ガス種,供給圧力,当量比)や燃焼器形状パラメータ(円弧半径,反射壁角度,燃焼器幅)を変化させた可視化実験を行い,安定作動条件を明らかにするとともに,推力性能評価も実施する.
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