研究課題
既存燃焼サイクルで「最高の理論熱効率」と「高速燃焼による燃焼器の小型化」を実現するデトネーションエンジンの実現に向けて、デトネーション波の連続的な生成による高出力化と高い熱負荷の低減を同時に実現する必要がある。本研究は、燃焼器全長で決定する気体力学的上限周波数(すなわち,短い燃焼器での高周波数)でのパルスデトネーションサイクル(PDC)を低熱負荷で実現することを目的とする。具体的には、(1)レーザー点火によるデトネーション遷移時間・距離の最小化、(2)液体燃料気液相転移現象を利用したパージ物質レスの理想的なPDCの実現である。目的(1)に対して、エネルギー可変レーザー点火装置の構築を完了し、点火エネルギーを0~200mJの間で変化させられることを実験的に確認した。さらに、10mm×10mmの正方形断面の燃焼器を用いてエチレン-酸素量論静止予混合気での着火実験を実施した。その結果、レーザー集光点(点火位置)の変化により、デトネーション波に遷移するまでの距離・時間が変化することが確認された。壁面付近での点火に比べ、中心付近での点火では、レーザーブレイクダウン時に発生した衝撃波と燃焼波との干渉が多く発生することで火炎加速が促進されたと考えられる。2019年度には、多点同時点火が可能な燃焼器を新たに製作し、デトネーション遷移過程の短縮に効果的なレーザー点火方法を目指す。目的(2)に対して、全長40mmの小型燃焼器を用いて1916ヘルツの安定したPDCを実証した。また、エチレンを液化噴霧することに成功し、液体燃料を用いたPDCにも成功した。本結果から、更なる高周波数作動化には、自着火機構の解明と高応答燃料インジェクタの開発が必須であることを示した。2019年度には、液体燃料の潜熱を用いた低温予混合気による既燃ガス掃気法を実験的に確認するとともに、PDCに適したインジェクタの開発に着手する。
2: おおむね順調に進展している
目的(1)に対して、レーザー点火によるデトネーション遷移過程の短縮化を確認した。従来のスパークプラグでの点火では壁面付近での点火に制限されていた。本研究では、レーザー集光点を変化させ、壁面付近と中心付近での点火の2条件で可視化実験を実施した。その結果、狭い燃焼器内では、中心付近の点火の方がより衝撃波-燃焼波干渉が促進され、点火直後の火炎加速が早いことが確認された。目的(2)に対して、液体燃料によるPDCを実証した。燃料であるエチレンを-20℃程度まで冷却することで高圧・高密度の液体燃料を噴霧することに成功した。液体エチレンを用いたPDC作動を実証し、高密度混合気による高推力密度化が可能であることを示した。以上2つの点から、順調に進展していると評価した。
目的(1)に対して、多点同時点火によりデトネーション遷移過程を最短化する手法を模索する。既に、2点同時点火用の光学系の設計を開始しており、衝撃波-燃焼波の干渉現象を利用した新しいデトネーション遷移過程の短縮に関する基礎実験を実施する。目的(2)に対して、可視化実験による自着火機構の解明および液体燃料の有効性実証に取り組む。さらに、デトネーションエンジンに適した燃料インジェクタ形状の探求を3Dプリンタ技術を活用し進める。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 9件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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