研究課題
本研究課題では、低エネルギーイオン散乱照射技術を駆使することで、低炭素社会の中核となり得る超高効率エネルギー機能材料の創生を目指す。具体的には、超伝導材料の高機能化に向けて、イオン照射によって形成される照射欠陥と超伝導特性の変化を明らかにし、結晶欠陥などのナノ構造を制御することで超伝導特性を飛躍的に向上させることを目的に研究を行った。最終年度は銅酸化物高温超伝導体であるYBa2Cu3Oy (YBCO)薄膜に着目して研究を進めた。REBa2Cu3Oy (RE = 希土類元素、REBCO)超伝導薄膜の磁場中での臨界電流特性は、磁束線の人工ピン止め点導入により、飛躍的に向上している。磁束ピン止め点導入の一つの手段として、イオン照射技術を用いた欠陥形成が有効であることが知られているが、これまでは、数百MeV~数GeVの高エネルギーのイオン照射による報告が多く、比較的低いエネルギーを用いたイオン照射による系統的な報告は少ない。そこで本年度は、YBCO薄膜に10 MeVという比較的低いエネルギーで重いAuイオン照射を行い、超伝導特性の変化を系統的に調べた。さらに、Auイオン照射によって形成される照射欠陥と超伝導転移温度Tcや臨界電流密度Jcなどの超伝導特性との関係について検討を行った。その結果、照射量増加に伴い、Tcが単調減少していることが観察された。これは、Auイオン照射により結晶欠陥が形成されたためと考えられる。一方、10 MeV Auイオン照射により、4 T以上の磁場において、Jcが約40 %向上することが確認された。これらの結果から、低エネルギーAuイオン照射は磁場中Jcを向上させるのに有効な手法であると考えられる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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