大脳新皮質は、哺乳類のみに存在する大脳の表面を覆う領域で、多くの認知機能に関わる。6層構造からなる大脳新皮質は、各層の神経細胞が異なる入出力を持ち、学習・記憶が関与する認知課題をおこなう際には、様々な脳領域とネットワークを形成し、情報処理をおこなう。これまでの研究で本申請者は、報酬をともなう運動学習の記憶過程における、げっ歯類のマウス大脳新皮質の神経基盤を、in vivo2光子カルシウムイメージングで明らかにした。本研究では、小型霊長類のコモン・マーモセットを対象として、運動学習の神経基盤の解明を目指す。2光子励起顕微鏡下でイメージングをおこなうためには、コモン・マーモセットの頭部と胴体を固定した状態で運動課題をおこなわせる必要がある。従来のアクリル板による固定方法では、コモン・マーモセットがストレスを感じて行動課題をおこなわなくなってしまうことが多かった。このため本申請者は、これまで用いられていた頭部と胴体を固定する装置の胴体部分を改良し、ストレスを低減させるためにジャケットを着させて胴体を拘束する方法に変更した。これにより、頭部と胴体を固定した状態のコモン・マーモセットに、手を使ってレバーを引くと液体報酬を得ることができる「レバー引き報酬課題」をおこなわせることに成功した。さらに、課題実行時に2光子励起顕微鏡下でin vivo 2光子カルシウムイメージングをおこなうことにも成功した。
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