大脳新皮質は、哺乳類のみに存在する大脳の表面を覆う領域で、多くの認知機能に関わる。6層構造からなる大脳新皮質は、各層の神経細胞が異なる入出力を持ち、学習・記憶が関与する認知課題をおこなう際には、様々な脳領域とネットワークを形成し、情報処理をおこなう。これまでの研究で、報酬をともなう運動学習の記憶過程における、げっ歯類のマウス大脳新皮質・運動野の神経基盤を、in vivo 2光子カルシウムイメージングで明らかにした。本研究では、小型霊長類のコモンマーモセットを対象として、運動学習の神経基盤の解明を目指す。2019年度は、霊長類マーモセット用の運動学習課題を構築し、運動学習課題実行時の in vivo カルシウムイメージングを、大脳新皮質・運動野でおこなった。さらに霊長類マーモセットの大脳新皮質で、光遺伝学の技術を用いて神経活動を操作する系の確立を確立し、論文報告した。具体的には、大脳新皮質・運動野に光駆動性陽イオンチャネルChR2を、アデノ随伴ウイルスを用いて遺伝子導入し、ガラス窓を設置した。ChR2が十分に発現した後に、手の運動に関わる運動野を青色レーザーで照射し、光刺激することによって、手の運動誘発を生じさせることが可能となった。今後、運動学習題実行時に、2018年度に確立したin vivo カルシウムイメージングの系および2019年度に確立した光遺伝学の技術を用いて、運動学習の神経基盤解明を目指す。
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