研究課題/領域番号 |
17H04987
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮田 治彦 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (50604732)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 精子 / 鞭毛 / ES細胞 / キメラマウス / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
不妊はわが国の大きな社会問題となっており、その原因究明及び診断・治療法の確立が急務である。本研究では、欠損すると胎生致死や生後致死になる遺伝子の解析に向けて、ESキメラマウスを用いた解析法を確立するとともに、確立した解析法を用いて精子無力症 (精子運動性の低下) の原因遺伝子の機能解明を目指す。平成30年度は、本研究で樹立した、精子鞭毛のミトコンドリアにDsRed2と精子先体にEGPFを有する蛍光ES細胞 [RBGS(Red Body Green Sperm)-ES細胞] を用いて、Hydinの機能解析を行った。HYDINは原発性繊毛運動不全症の原因遺伝子であり、ヒト精子の運動性制御にも関わるという報告がある。しかしながら、HydinのKOマウスは水頭症のため、性成熟を待たずに生後3週間で死に至る。そのため、成熟精子におけるHydinの機能は不明であった。そこで、CRISPR/Cas9システムを用いてHydinを両アレル欠損したRBGS-ES細胞を樹立し、初期胚に注入することによってキメラマウスを作製した。その結果、ホスト胚由来の野生型細胞によって致死がレスキューされ、性成熟した個体を得ることができた。ミトコンドリアの蛍光を指標にHydin・KO精子を観察したところ、精子の尻尾が短く運動性を示さなかったことから、Hydinは精子尻尾の形成に必須であることが明らかになった。また,顕微授精を用いると産仔が得られたことから,Hydin・KO精子は個体発生能を有することも分かった。以上より,RBGS-ES細胞は精子機能関連因子の解析に有用なツールとなることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RBGS-ES細胞を用いて作製したキメラマウスの解析を行い、Hydinが精子尻尾の形成に必須であることを明らかにできた。さらに顕微授精を用いれば、Hydin・KO精子からでも産仔が得られることが分かった。RBGS-ES細胞が精子機能を解析する有益なツールであることが示されたため、このES細胞を用いて精子機能の解析を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
キメラマウスを用いた解析技術の更なる向上のために、雌雄キメラマウス判別法の確立を目指す。X染色体上に遺伝子が挿入されたトランスジェニックマウスを用いることによって、雌雄の判別を行う。まずは、Hydinを欠損させたES細胞を用いて解析を行う。雌雄キメラマウスであれば、精子は全てES細胞由来になるため、電子顕微鏡を用いたKO精子の観察やウェスタンブロット法を用いた解析が可能となる。 また、Hydin以外の3遺伝子についてKO・ES細胞を樹立し、キメラマウスを用いた解析を行う。
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