骨髄異形成症候群は高齢者に多い疾患であり、今後高齢化社会の進行とともに発症率は上昇すると考えられる。本研究では、骨髄異形成症候群の病型移行や治療前後でのクローン構造の変化を評価し、臨床判断に有用な予後予測マーカーを同定することを目的とした。 骨髄性腫瘍の新規driver遺伝子であるARID2を大規模コホートで評価し、約1%の症例に変異またはコピー数異常が認められること、変異は初期段階で獲得されていることを明らかにした。またARID2変異/欠失と巨核球異形成との関連を明らかにした(Sakai H et al. Leukemia 2018)。造血器腫瘍再発モデルとして連続的にMLL/AF9陽性マウス白血病細胞をC57BL/6マウスに移植した。移植の回数を重ねるにつれ、再発期間が短くなり、ゲノム異常も蓄積することを明らかにした。さらに新規標的としてGNB2変異を同定し、その機能解析を実施した(Kitani S et al. Leukemia 2019)。更に、骨髄異形成症候群ではしばしばスプライシング因子が変異しているが、スプライシング因子変異より生じるスプライシング異常に関して網羅的に解析し、その標的を同定した(Shiozawa Y et al. Nat Com 2018)。また、現在クローン性造血と骨髄異形成症候群のゲノム異常のスペクトラムを評価中である(論文投稿中)。更に、予後不良であるTP53変異陽性例では、一時的ではあるがDNAメチル化阻害剤であるアザシチジンに対する治療反応性が良好なこと、投与後にクローンサイズが縮小する傾向があることを明らかにした。アザシチジンによるTP53変異クローン縮小後に、唯一の根治的治療である同種造血幹細胞移植を実施することで予後が改善する可能性が示唆される。今後、症例を積み重ねていく予定である。
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