研究課題/領域番号 |
17H04991
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
山本 雄介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (60768117)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Ras遺伝子 / 上皮細胞 / 組織特異性 |
研究実績の概要 |
活性化したがん遺伝子の中にはほぼ類似した機能を持つにもかかわらず、遺伝子変異の検出頻度が、がん種ごとに大きく偏るものがある。本研究では、異なった活性化型Ras遺伝子を様々な上皮細胞に導入し、形態的観察や発がん効率、遺伝子発現およびエピゲノムの観点から詳細に比較検討する。それにより、同一機能を持つとされる3種の活性化型Ras遺伝子の発がん過程での組織特異性および指向性の違いについて包括的な理解を目指す。前年度からの研究によって上皮細胞ごとに各Ras遺伝子導入し、それらの表現型の解析を行った。発がんステージごとの遺伝子発現解析 (RNA-seq)によって、正常上皮細胞から活性化型Rasの導入によってがん化する細胞の遺伝子発現プロファイルの変化を確認した。Rasの下流シグナルに対するタンパク質に対するウェスタンブロットを実施し、特定のRas遺伝子が特定の細胞で活性化していることを認めた。これらのデータをさらに検証するため、各Ras遺伝子を5種類の上皮細胞(皮膚、乳腺、前立腺、肺気管上皮、肺小気道上皮)に導入し、それぞれの下流のシグナルの検証ならびにエピゲノムの変化を網羅的に確認する。そのデータ解析によって、特異的なRasの分子機序を明らかにする。 さらにKrasが活性化している細胞に対して特異的に細胞増殖を抑制する経路を同定し、それらの阻害を行うことで、肺がんの細胞によって、Kras特異的な抑制が可能な低分子を複数同定した。それぞれについて特異的に効果を示す分子メカニズムの解明を下流の経路のタンパク質の活性化の確認ならびに網羅的な遺伝子発現解析の結果から実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
組織特異的なRas遺伝子の検証については、ヒト上皮細胞を用いて検討より、すでに遺伝子変異のパターンから予想されたRas遺伝子が各組織で重要であることが概ね確認が終了した。さらにRasの下流シグナルをウェスタンブロットで確認したところ、予想通り、発がん性を有するRasと組織の組合せにおいて、他のものよりも有意に下流が活性化していることが確認された。さらに遺伝子発現およびエピゲノムのパターンよりそれらを追加検証していく。 さらに、本研究課題より派生したRas活性化細胞を特異的に殺傷する分子の同定においてもすでに複数の経路に関連する分子を特定した。生体外および生体内での検証によっても確認され、1つの経路に関連するデータについてはすでに論文発表した。2つ目の候補経路に関しても、現在、論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は順調に進んでおり、組織特異的なRas遺伝子の機能解析については、データの確認と追加でオミックス解析を予定している。それらのデータをまとめて学会発表および論文発表を行う。Ras活性化細胞を特異的に阻害する経路、分子の解析はおおむね、終了しており、学会発表および論文発表を順次進めていく。
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