研究課題
がん細胞は周囲の間質細胞との相互作用によって生存に有利な状況を作り出しているが、抗がん剤の耐性獲得にも重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。研究代表者らはマウスに移植したヒトがんXenograft系における全トランスクリプトームシーケンスから、がん細胞-間質細胞間の相互作用全体(インターラクトーム)を包括的に解析する技術を開発した。本研究ではこの技術を単一細胞レベルの解析に拡張し、がん細胞と線維芽細胞・血管内皮・炎症細胞など各間質細胞との相互作用を個別に解析する技術を開発する。本手法により患者がん組織から直接樹立したPDX(Patient-Derived Xenograft)の抗がん剤投与前後のインターラクトームプロファイルを解析することで、間質を標的とした新たな抗がん剤耐性克服ターゲットの同定を目指す。研究代表者らの開発した細胞間相互作用全体(インターラクトーム)解析をシングルセル・トランスクリプトームに対応させるため、アルゴリズムおよびソフトウェアの改良を行った。新しいアルゴリズムでは、まず各細胞の発現プロファイルを作成し、それをマーカーの発現量及び、クラスタリングアルゴリズムを用いて、各細胞種に分類する。次に全細胞種の組み合わせについて、個別にインターラクトームプロファイルを構築する。また、得られたインタラクトームプロファイルの可視化を行うソフトウェアも合わせて開発した。本手法を用いてがん組織検体のシングルセル・インタラクトーム解析を行い、本手法の有効性を検証した。また、細胞種が多い場合に大きく変化が生じている相互作用をシグナルの強さの変化、相互作用において果たす役割の変化の大きさに基づいてランク付けを行うアルゴリズムの開発を行っている。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記載のとおり概ね順調に進展している。
前年度に引き続き、細胞種が多い場合に大きく変化が生じている相互作用をシグナルの強さの変化、相互作用において果たす役割の変化の大きさに基づいてランク付けを行うアルゴリズムの開発を進める。また、胃がん、膵がんなどの臨床がん検体からのDirect Xenograft組織のシングルセル・インタラクトーム解析を行う。研究代表者らはすでに胃がん・大腸がん・肺がん・腎がんを中心に約50個体のがん種の PDX の樹立を行い、シングルセルではない通常のインターラクトームプロファイルを得ている。シングルセル・インターラクトームプロファイルとこれらを比較し、シングルセル・インターラクトーム解析の有効性を検証する。
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