研究課題/領域番号 |
17H04994
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西田 敬二 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (10620338)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 合成生物 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、標的とする任意のDNA配列を切らずに直接書き換えることが出来るゲノム編集技術として、これまでに達成できた、シチジン脱アミノ化反応を用いる「切らないゲノム編集C型」に加えて、より難易度の高い「切らないゲノム編集A・T型」を実現すべく、DNAアデニン・チミン変換型ゲノム編集人工酵素等を構造的アプローチと進化工学を駆使して創出し、新たなゲノム編集技術として確立することが本研究計画の目的である。これによってすべてのDNA塩基の自在な書き換えを実現し、生命科学全般の基盤となる革新的なツールを提供する。
本年度は新たな塩基編集技術としての幅広い可能性を検証すべく、脱アミノ化とは異なる反応機構の採用について検討を行った。実際にはウラシルDNAグリコシラーゼを母体として、立体構造を元に基質塩基の特異性の変換および二本鎖DNAへの親和性を減じると予想される複数の組み合わせ変異導入を行い、細胞内でゲノム不安定性をもたらさずに発現可能であり、かつ標的化された領域に限定してチミンを脱塩基できる人工酵素の作成に成功した。これによってチミンから別の塩基への変換が可能になることが大いに期待される。ただし当初の形状では効率が低かったので、さらなる改良を検討した。まず母体酵素の由来を幅広い種について試験したところ、大腸菌由来のものがより活性が高い可能性が示唆された。また修復系への干渉も重要であると考え、脱塩基後の修復に関わるAPエンドヌクレアーゼの変異体を作成、拮抗的な阻害を目論んだところ有意な変異率の上昇をみることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に定めていた計画の一つ、DNAシトシン以外の塩基に作用することができる人工酵素の候補として、DNAチミンを実際の細胞内で脱塩基化することによって標的特異的に変異導入できる人工酵素複合体を獲得することができた。またその効率を高める種々の改良についても着手してポジティブな結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる技術の改良、特に効率の上昇には本体酵素の進化工学的アプローチが必要であると思われるが、効率の良いスクリーニングおよび変異評価系が重要となるのでこれらを含めた形で引き続き検討を進める。また、現状ではチミンから何に変化するかコントロールできないため、複数段階の反応および修復機構の操作も含めて可能性を検討する必要がある。
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