研究課題/領域番号 |
17H04997
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大平 高之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90727520)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | tRNA / 成熟化 / 5' cap / 転写後修飾 / 遺伝子発現制御 / 出芽酵母 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、以下の3つの課題を実施した。 ①5' cap修飾を持つpre-tRNAの特定と動態の解析:pre-tRNA cappingが形成される生物学的意義に迫るため、様々なストレス条件下で培養した酵母細胞におけるpre-tRNA cappingについて解析を行った。その結果、多くのストレス条件はtRNA前駆体の蓄積量の減少を引き起こし、これに伴いpre-tRNA cappingの減少も確認されたが、あるストレス条件下においてはpre-tRNA cappingの形成が促進されることが分かった。 ②pre-tRNA cappingが関与する新規の遺伝子発現制御機構の探求:5' cap修飾されたpre-tRNAが細胞内で巨大複合体と相互作用しているか調べるため、出芽酵母由来の細胞抽出液をショ糖密度勾配遠心法により分画した後、ノーザンブロットによる確認を行ったところ、pre-tRNAはリボソーム画分に存在している可能性が示唆された。また、5' cap修飾されたpre-tRNAがmRNAのように翻訳される可能性を検証するため、pre-tRNA内部にアフィニティータグをコードするORFを挿入した改変tRNA遺伝子を有する出芽酵母株を構築し、細胞内において改変tRNAが細胞内で転写されていることをノーザンブロットにより確認した。 ③X cap付加酵素の探索: X cap付加酵素を探索するため出芽酵母由来の細胞抽出液を用いたin vitro X cap付加反応系を確立することに成功した。さらに細胞抽出液をイオン交換クロマトグラフィーにより分画した各画分について同実験を行い、X cap付加酵素活性の高い画分を特定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難易度が高く困難が予想されていたpre-tRNA cappingが変動する生育条件の特定やin vitroにおけるX cap付加反応系の確立に成功し、pre-tRNA cappingの生理的意義の理解やX cap付加酵素遺伝子の特定に向けて大きく前進することが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに研究を遂行する予定である。具体的には、①については、ストレスによってpre-tRNA cappingが促進された分子機構について解析を行う。②については、5' cap修飾されたpre-tRNAとeIF4Eとの相互作用がタンパク質合成を阻害する可能性を検証する。また、pre-tRNAが翻訳される可能性を検証する。③については、X cap付加酵素の特定を目指す。特定後はその遺伝子破壊株を構築しX capが消失することの確認とリコンビナントタンパク質を調製し反応速度論解析を行う。
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