研究課題/領域番号 |
17H04998
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩崎 信太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (80611441)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リボソーム / 翻訳 / RNA |
研究実績の概要 |
翻訳開始因子であるeIF4Aパラログ、eIF4A1とeIF4A2が選択的に翻訳を行っているか、を検証するために、HEK293細胞からCRISPR-Cas9法を用いeIF4A1及びeIF4A2それぞれがノックアウトされた細胞株を樹立した。OP-puro法によって翻訳全体量を計測したところ、eIF4A1およびeIF4A2ノックアウト細胞で翻訳量が減少していることが明らかになった。また、eIF4A2ノックアウトに比べ、eIF4A1ノックアウトの方がより翻訳減少量が大きかった。同時に細胞の増殖能を調べたところ、翻訳の減少量と相関し、eIF4A1とeIF4A2ノックアウト細胞において細胞増殖の減少が観察された。 これらの細胞を使い、ribosome profiling法を用いその翻訳変化を網羅的に解析した。その結果、eIF4A1、eIF4A2それぞれのノックアウトで特異的に翻訳が減少するmRNA群を同定することができた。さらにその選択性の詳細を解明するために、eIF4A1及びeIF4A2にストレプトアビジン結合ペプチドタグが付与されたタンパク質をHEK293細胞で発現させ、ストレプトアビジンビーズにより精製しeIF4A1及びeIF4A2に結合するRNAを次世代シークエンサーにより解析した(RIP-Seq)。その結果、RNA-タンパク質結合においてもeIF4A1およびeIF4A2が選択的にmRNAに結合していることが明らかになった。また、eIF4Aパラログによる選択的mRNA結合と、eIF4Aパラログをノックアウトした際に生じる選択的翻訳減少は逆相関の関係にあることが明らかとなった。これらの実験から、eIF4Aパラログはそれぞれ選択的にmRNAに結合し、選択的に翻訳を促進することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の研究により、eIF4A1、eIF4A2が非常に相同性の高いタンパク質でありながらも選択的にmRNAへ結合し翻訳を促進していることが明らかになりつつある。これらの研究成果は当初概ね予想していた通りに進行している。eIF4A1をノックアウトすると、eIF4A2が過剰発現するという当初予想されなかった研究結果も観察されている。eIF4A1およびeIF4A2の選択性を決めるRNA領域の同定は難航しているが、更に詳細なバイオインフォマティクスによる解析によって絞り込みを行うことで対応できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年の研究結果をもとに、eIF4Aパラログが選択性を発揮する分子機構の詳細に迫りたいと考えている。eIF4Aそれ自身はRNA配列選択性が低いのでeIF4Aパラログに選択的に結合する何らかの因子が選択性を決定していると考えられる。eIF4Aパラログに結合する因子をSILAC法など質量分析の手法を用いて明らかにしていきたい。
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