研究課題
本研究課題では、維管束幹細胞を題材に、運命の時空間的な制御機構を明らかにすることを目的とした。まず、維管束分化誘導系VISUALを用いた深部イメージングから葉の向背軸情報が幹細胞の木部・篩部細胞分化運命に重要であることを見出し、中でも背軸側因子であるYABBY3の運命決定への関与が示唆された(Nurani et al., 2020, PCP)。この情報をもとに、分化誘導時にLCM法を用いて葉の向軸側と背軸側にわけてトランスクリプトーム解析をおこない、ある植物ホルモンのシグナル制御に関わる因子が背軸側特異的に発現することが明らかとなった。実際にこのホルモン量をコントロールすることで幹細胞の運命を自在に操作することができるようになった。一方でこれまでの研究から、転写因子BES1の機能欠損体bes1では、幹細胞分化が抑制され、分化誘導系VISUALにおいて木部・篩部細胞の形成がおこらないことが知られている。このbes1変異体の表現型抑圧スクリーニングから、幹細胞分化を促進する遺伝子を新たに2つ同定することに成功した。そのうち1つは概日周期に関わるものであり、維管束幹細胞分化制御が空間的だけでなく時間的にも制御される可能性が示唆された。当初の計画とは異なる形ではあるが、時空間の情報が幹細胞の分化運命を制御していることが明らかとなった。位置情報についてはホルモンとの関連性が強く示唆された一方で、空間情報についてはどのような経路を介して幹細胞の運命を制御しているかは明らかとなっていない。本研究を通して手掛かりは多数得られたので今後、遺伝子発現解析や遺伝学のアプローチから明らかにしていきたい。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Plant & cell physiology
巻: 61 ページ: 255 - 264
10.1093/pcp/pcaa002
Methods in molecular biology
巻: 2014 ページ: 459 - 466
10.1007/978-1-4939-9562-2_36