研究課題/領域番号 |
17H05010
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹羽 伸介 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30714985)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ARL-8 / UNC-104 / キネシン / 軸索輸送 / シナプス小胞 |
研究実績の概要 |
ARL-8を含むsmall GTPaseの性質として不活性型は細胞質に局在し、活性型は膜状に局在する。ARL-8::GFPは膜小器官上に局在をすることから、正常なの神経細胞ではなんらかのメカニズムによってARL-8が活性化状態になっていることが示唆された。そこで、ARL-8が細胞質に移行する(=不活性状態になる)変異体を探索した。EMSを用いた遺伝学スクリーニングの結果、BLOC-1関連複合体(BORC)と呼ばれる複合体の変異体ではARL-8が不活性型になることがわかった。これはすなわち、正常な細胞ではBORCがARL-8を活性化していることを意味している。それでは、BORCはARL-8同様にシナプス小胞前駆体の軸索輸送を制御するだろうか? BORCの変異体を変異体ライブラリーから取り寄せおよびCRISPR/Cas9法で作成して、シナプス小胞マーカーを観察したところ、BLOS-1、BLOS-2、KXD-1、Myrlysin、Lyspersin、MEF2BNBの6つの変異体においてシナプス小胞が細胞体近傍に異常に集積することがわかった。これはモータータンパク質であるUNC-104やその制御因子であるARL-8で見られるのと同様な表現型であり、BORCもまたシナプス小胞前駆体の軸索輸送に必須の因子であることを示す。 次にBORCによるARL-8の制御機構を解析するためにBORCのサブユニットであるSAM-4とARL-8を大腸菌で発現・精製し、生化学実験を行った(スタンフォード大学 Max Nachury研究室との共同研究)。その結果、SAM-4がARL-8を活性化する働きを持っていることが明らかとなった。この結果はCurrent Biology誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に研究は進展し、すでにARL-8上流因子としてBORCの同定に成功し、CRISPR/cas9法を用いることですべてのBORCサブユニットの欠損変異体を得ることに成功した。また、BORCサブユニットであるSAM-4がGDP-GTP exchange factorとして働くことを明らかにすることができた。BORC→ARL-8→UNC-104からなるシナプス小胞の軸索輸送の活性化に関与するカスケードを同定することができた。これらの結果をCurrent Biology誌に発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ARL-8::GFPの局在に異常が起こる変異体を複数得ることができている。これらはBORCには変異が入っていないことから、なんらかの新規因子である可能性が非常に高い。全ゲノムシークエンスを行うことでその原因遺伝子を決定し、BORCと同様に軸索輸送への関与を明らかにする。この因子が軸索輸送活性化カスケードのどこに位置するかを解析する。
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