研究課題
これまでに特定しているはばたき飛行を制御する脳下行性ニューロンについて,分子遺伝学的な手法を用いて形態学的な分析を行い,ニューロンの入出力を特定した.下行性ニューロンへの入力細胞として,視覚系・平衡感覚系のニューロンを特定した.飛翔神経叢およびハルテア神経叢への投射に加え,脳内の深部領域にもシナプス出力部をもつことが分かった.また,脳下行性ニューロンを選択的に標識する遺伝子組み換え系統の作出を継続し,この過程で,はばたき制御に重要な役割をもつことが推察される新たな脳下行性ニューロンを発見した.下行性ニューロンに関わる3件の実験結果,飛行回路を含む神経系についての神経解剖地図をプレプリントサーバbioRxivにアップし,作成した遺伝学的リソースについて,コミュニティに公開した.GAL4系統データベースを用い,運動系である飛行回路を構成する飛翔神経叢,ハルテア神経叢のニューロンの分析を行い,運動ニューロン・介在ニューロンについて,新たな細胞種を同定した.神経支配領域を分析することにより,飛行回路の内部構造を分析した.神経突起分布のプロファイルをもとにした多変量解析により,背腹軸にかけて層状の機能的構造の存在を示した.またSplit-GAL4交差法を用いて,これらのニューロンタイプを選択的に標識する遺伝子組み換え系統を作出した. 作出した系統について,今後活性化および不活性化実験を行い,どのようにはばたき飛行へ貢献しているかを検証する.
2: おおむね順調に進展している
飛行制御ニューロンの分析:これまでに同定されたはばたきをコントロールする脳下降性ニューロンDNa02のシナプス領域の解析を行った.分子遺伝学的な手法を用い,経シナプストレーサーによって,DNa02のシナプス前細胞の探索を行い,視覚系・平衡感覚系の細胞を特定した.またシナプトタグミンによる分析を行い,胸部神経節の神経終末はシナプス前末端であること,さらに脳内においても,インフェリア・ブリッジという領域にシナプス前末端が存在することを明らかにした.また研究の過程で,全体的にDNa02に類似の形状を示すが,飛翔神経叢の異なる領域へ投射をもつ下行性ニューロンDNa03の分析を行った.DNa02と同様,それぞれ類似する小型のニューロンの集団であり,DNa03との機能的な差異が推察される.飛行回路の解析:GAL4系統データベースにより,飛翔神経叢を構成する運動ニューロン,介在ニューロンの同定を行い,ニューロンタイプ別のリストを作成した.このリストを元に,Split-GAL4交差法を用いて,ニューロンタイプを選択的に標識する遺伝子組み換え系統を作出した.同定したニューロンの三次元再構築を行い,飛行神経回路の内部構造を分析したところ,2つレイヤーに分かれていることを発見した.背側のレイヤーは,脳とよく接続し,またパワー筋運動ニューロンがより多くの神経支配をもっていた.腹側のレイヤーは,制御筋運動ニューロンがより多くの神経支配をもっていた.またジャイロスコープ様のセンサであるハルテアからの感覚信号を処理するハルテア神経叢についても同様に分析を行い,各ニューロンタイプを同定し,これらを選択的に標識する系統を作出した.飛翔神経叢と同様,背側と腹側の2層に機能的に分化していることが推察される.
飛行制御ニューロンの分析:はばたきをコントロールするニューロンDNa02の飛行中の神経活動を計測する.立体的に分布する45番の樹状突起分枝について,最適な計測プレーンを検討する.DNa02は脳内におよそ15対存在するニューロン集団であり,(1)DNa02のニューロンが方向,速度,加速度など,飛行のパラメータをどのように表現しているか,(2)集団のそれぞれのニューロンの応答の個性を調査する.また,DNa03について,これを標識する遺伝子組み換え系統を作出し,シナプス接続解析を行う.飛行回路の解析:昨年度に同定した飛翔神経叢,ハルテア神経叢のニューロンデータをアフィン変換によって標準座標系に登録し,各ニューロン同士の接続関係を推測する.とくに,2つの神経叢間同士の連絡と,機能未知の領域であるテクチュリムへの投射に注目する.
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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