研究課題
飛行制御ニューロンの分析:飛行制御ニューロンDNa02の活性化によって引き起こされるはばたき振幅の増大・はばたき周波数の上昇の時間変化について分析を行った.この結果,はばたき周波数の変化は常にはばたき振幅の変化に先行することが分かった.またさまざまな活動状態の条件を比較した結果,活性化以前に高いはばたき周波数を示す場合においては周波数の減弱も認められたことから,DNa02の活性化に伴い,周波数が一定の値(~210Hz)に収束するセットポイントの存在が示唆された.カリフォルニア工科大学との共同研究によって,飛行時ショウジョウバエ脳のin vivoカルシウムイメージングによって,DNa02は視覚刺激に応答し,神経活動がはばたき振幅と相関することが明らかになった.DNa02は実際には,よく似た形態学的特徴を示す細胞集団であるが,それぞれの細胞が,視覚刺激に対して異なる選好性を持つことがわかった.飛行回路の解析:昨年度に引き続きGAL4系統データベースにより,飛翔神経叢・ハルテア神経叢を構成する運動ニューロン,介在ニューロンの同定を行い,ニューロンタイプ別のリストを作成した.このリストを元に,Split-GAL4交差法を用いて,ニューロンタイプを選択的に標識する遺伝子組み換え系統を作出した.飛翔神経叢,ハルテア神経叢のニューロンデータを標準座標系に変換し,神経細胞の分布を調査した.分布の類似度により,ハルテア神経叢の内部構造を,背側と腹側の領域に定量的に分割した.予想していなかった結果として,ハルテア神経叢から,飛翔神経叢へと接続する巨大な軸索をもつ5つの新しいタイプの介在ニューロンを発見した.すでに報告されている2タイプに加え,軸索径および投射先により計7種類に分類し,それぞれのタイプを選択的に標識する系統を作出した.
2: おおむね順調に進展している
飛行制御ニューロンの分析,飛行回路の解析の両方のテーマで研究が進んでいる.また胸部神経節に存在する新たな神経細胞を発見するという予想外の結果を得た.無脊椎動物神経系における巨大な細胞は,行動と大きく関わる事例が多い.この細胞タイプについては,遺伝子組み換え系統を作出しており,今後ショウジョウバエの飛行能力を研究するための重要なツールになると思われる.
はばたき飛行の制御と飛行回路の解剖学に関する成果をまとめ,論文発表を行う.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 10件、 招待講演 4件) 図書 (2件)
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