研究課題/領域番号 |
17H05015
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
野澤 昌文 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (50623534)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 性染色体 / 進化 / ショウジョウバエ / 性的拮抗 / 適応度 |
研究実績の概要 |
H29年度は、Drosophila albomicansとD. nasutaの両種における性的拮抗の程度を測定するための手法の確立に特に力を入れた。性的拮抗の尺度として、オスとメスの適応度の相関を用いることとし、両種それぞれ20系統ずつを用いて、オスとメスそれぞれの適応度を順位付けすることを目指した。もしNeo性染色体が性的拮抗の軽減に寄与しているならば、Neo性染色体を持つD. albomicansはNeo性染色体を持たないD. nasutaに比べて性的拮抗の程度が小さいはずである。 測定系統のオスとコントロール系統のオスを5匹ずつ入れ、そこに1つの系統のメス5匹を入れる。このときコントロール系統のオスに優性可視マーカー入れておけば、F1世代の表現型を見るだけでどちらの系統のオスの精子が次世代に伝わったかを判定できる。これを雌雄入れ換えて行うことで測定系統のオスとメスそれぞれの適応度を測定できる。 そこで、眼にGFPを発現するD. albomicansとD. nasutaの系統化を目指し、熱ショックによりtransposaseを発現するPiggyBacベクターとGFP遺伝子を組み込んだPiggyBacを胚にインジェクションした。しかし、条件の最適化に手間取り、どちらの種においても変異体系統の樹立には至らなかった。 そこで、コントロール系統を使用せずに適応度を測定する方法として、測定系統のオスを別の系統のメスと交配させ、得られたF1個体の総数を用いるやり方に着手した。しかし、エサの状態などにより得られるF1個体数に大きなバラツキがみられた。更なる条件検討が必要と思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
性的拮抗の程度を測定するための適応度測定法をいまだ確立できていないため。
|
今後の研究の推進方策 |
1.適応度測定法の確立を目指し、引き続き2つの方法を試す。 ア)眼でGFPを発現する変異体系統の作成:D. albomicansとD. nasutaは共に熱ショックに弱い可能性があるため、熱ショックをかけなくてもtransposaseを発現するPiggyBacを用いてインジェクションを行う。 イ)コントロール系統を使用しない適応度測定法:エサにカビが生えると得られるF1個体の数が激減するので、防腐剤の量を増やすなどして、出来るだけレプリケート間のばらつきが少なくなる条件をさがす。
2.適応度の測定に時間がかかった場合に備え、あらかじめ首都大学東京で維持している両種の系統のうち、異なる地域集団10系統ずつを選び、ゲノムとトランスクリプトームを決定しておく。オスとメスで発現量が異なり、かつオスでの発現量の順位とメスでの順位に負の相関がみられるような遺伝子を検出する。このような遺伝子は性的拮抗に関わっている可能性がある。
|