今年度は、昨年度に引き続き、遺伝子発現量の雌雄差から性的拮抗に関わる遺伝子を予測することを試みた。 また、今年度はY染色体の消失が性的拮抗に及ぼす影響についても検証するため、ヒゲジロショウジョウバエ(Drosophila lacteicornis)を用いた研究にも着手した。我々の詳細な核型観察により、この種のオスにはY染色体が存在しない(すなわちXO型である)ことが明らかになった。そこで、このショウジョウバエのオスのDNAを用いてロングリードシーケンス(Oxford NanoPore MinION)を行い、ゲノムアセンブリを構築した。また、雌雄それぞれのDNAを用いてショートリードシーケンス(Illumina HiSeq X)を行い、ゲノムアセンブリを補正するとともに、ショートリードを得られたゲノム配列にマッピングし、読取深度の雌雄比から常染色体とX染色体由来のScaffoldを分類した。さらに、近縁種のD. neoasahinai、D. asahinaiでも同様の実験を行った。これらの情報は今後の性染色体研究、性的拮抗研究において極めて重要であると考えられる。 さらに、今年度はこれまで得られた情報をまとめ、D. miranda、D. albomicans、D. americanaの3種のネオ性染色体の進化に関する論文を執筆した。現在論文を投稿中である。また、プレプリントをbioRxivに登録した。
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