研究課題/領域番号 |
17H05016
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
末次 健司 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70748839)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 菌従属栄養植物 / 従属栄養植物 / 寄生植物 / 菌根共生 / 送粉共生 / 種子散布共生 |
研究実績の概要 |
一般に陸上植物の多くは菌根菌と共生しており,土壌の無機塩類と光合成産物を供給し合う相利共生の関係を成立させている.一方,菌従属栄養植物と呼ばれる植物は,光合成能力を失い,菌根菌から養分を略奪するという特異な進化を遂げている.しかしながら菌従属栄養植物は,開花および結実期以外は地上に姿を現さないため,その研究には困難が伴った.このような課題を解決するため,私は,菌従属栄養植物の精力的な探索と記載分類を行い,詳細な研究を遂行するための土台を築いてきた.その土台をもとに,本研究では,植物が関わる重要な共生系である送粉共生系や菌根共生系,種子散布共生系が,菌従属栄養植物の種分化や多様化にどのような影響を与えたのかを検討している. 今年度の主要な成果としては,1950年代~1960年代初頭にかけて大気圏内の核実験により大気中に多量の放射性炭素同位体が放出されたこと,また大気圏内核実験禁止後に放射性炭素同位体が徐々に減少してきたことを利用して,菌従属栄養植物の生体内の炭素がいつ光合成によって固定されたかを検討したことが挙げられる.その結果,一部の菌従属栄養植物は,数十年前に植物によって固定された炭素を利用していることが明らかになった.このことは,菌従属栄養植物の一部が,腐朽菌の菌糸を通じて枯れ木から炭素を得ていることを証明するものである.菌従属栄養植物は,自身が生物の死体を分解する能力があるという誤解により,かつて「腐生植物」と呼ばれていた.植物自体が腐朽能力を持つ,真の意味での「腐生植物」は存在しないが,本研究により,菌従属栄養植物の一部が,間接的に腐食連鎖系に依存していることが明らかになった.菌類が果たす重要な生態系機能として,「菌根共生」と「分解」が挙げられるが,菌従属栄養植物は,この両者を搾取することに成功した稀有な存在であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の成果は,当該年中も複数の著名な国際学術論文誌で受理,出版されており,期待以上の研究の進展があったといえる
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,野外観察,室内実験を行い,得られた成果は速やかに国際学術論文誌に投稿する.
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