研究課題/領域番号 |
17H05022
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
飯田 祐一郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 主任研究員 (00456609)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エフェクター / トマト葉かび病菌 / 菌寄生菌 / システインプロテアーゼ / システインプロテアーゼインヒビター |
研究実績の概要 |
植物病原菌は宿主植物の防御反応を抑制するために、エフェクターと呼ばれる低分子タンパク質を病原力因子として分泌する。一方、抵抗性遺伝子をもつ植物はエフェクターを介して病原菌の侵入を感知するため、植物の抵抗性誘導因子としても機能してしまうという二面性をもつ。そのためエフェクターは、病原菌と宿主植物との相互作用においてのみ重要とされてきたが、申請者は「感染できる植物がいない環境では、病原菌のエフェクターは他の微生物に対しても重要な機能をもつのではないか?」と考えた。 初年度は基盤情報の整備を実施した。研究対象である菌寄生菌Dicyma pulvinataのドラフトゲノムを解読するとともに、ORF予測、遺伝子機能のアノテーション、分泌タンパク質予測などのin silico解析を行った。その結果、10,700遺伝子が同定され、9つのシステインプロテアーゼが見出された。トマト葉かび病菌のエフェクターAvr2はシステインプロテアーゼインヒビターをコードしていることから、菌寄生菌のいずれかのシステインプロテアーゼと相互作用すると考えられる。9つのシステインプロテアーゼ遺伝子の構造解析とリアルタイムPCRによる定量的発現解析から、2つの分泌型システインプロテアーゼがトマト葉かび病菌への寄生時に数百倍に発現上昇していることが明らかとなった。しかしながら、これらシステインプロテアーゼ遺伝子は、Avr2と相互作用することが報告されているトマトのRcr3やPip1との相同性はいずれも極めて低いことが明らかとなっている。今後、酵素の至適pH、Avr2タンパク質による阻害効果、プルダウンアッセイによる相互作用の解析を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
効率的な研究推進のために必須である、菌寄生菌のオミクス情報の整備を完了した。PacBio RSIIによって菌寄生菌D. pulvinataのドラフトゲノムを決定した。本菌が属するXylariales(クロサイワイタケ目)ではゲノム配列が公開されている種がないため、糸状菌ゲノム情報としても新規性を持つ。de novoアセンブル、ORF予測、遺伝子機能のアノテーション、分泌タンパク質予測によって機能をマッピングし、ゲノム情報の解読を終了した。翌年度からはこれら基盤情報を元に目的タンパク質の探索を加速化させる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更はなく、予定どおりAvr2と相互作用する菌寄生菌D. pulvinataのシステインプロテアーゼを探索する。
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