研究課題/領域番号 |
17H05025
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安藤 晃規 京都大学, 農学研究科, 助教 (10537765)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマローゲン |
研究実績の概要 |
近年、プラズマローゲンリン脂質が、生体の恒常性維持に重要な機能を担うことが明らかにされ注目を集めている。しかし、その体内動態や具体的な生理機能は不明である。そこで微生物由来プラズマローゲンに着目し、分布、形態、組成を精査し、さらに生合成経路の解明に取り組む。 本年度は、プラズマローゲンの分析系の立ち上げとスクリーニングに取り組んだ。菌体中の総脂質に対して酸性条件下でメタノールを反応させると、プラズマローゲンのビニルエーテル構造由来のジメチルアセタール(DMA)が生じることが予想できる。そこで、菌体からの脂質抽出およびメタノール処理の各ステップについて条件検討を行なった。結果、菌体を凍結乾燥破砕し、Bligh-Dyer法にて総脂質を抽出した後、10%塩酸-メタノール溶液を作用させ、GC-MS分析条件を最適化することにより、DMAを高感度で検出できる分析系を確立した。さらに、本手法を用いて、プラズマローゲン生産菌の探索を行なった。研究室保存菌867株(真菌154株、担子菌54株、嫌気性菌および乳酸菌660株)および自然界からの新規単離細菌187株の合計1055株についてGC-MS分析を行なったところ、236株(真菌類5株、嫌気性細菌161株、新規単離細菌70株)からDMAが検出された。この236株のうち、特に高いDMA値を示した60株をLC-MS分析に供したところ、Clostridium属、Megasphaera属、Bifidobacterium属をはじめとする嫌気性細菌25株において、プラズマローゲン型リン脂質が検出された。さらに、25株をLTQ Orbitrapに供し、プラズマローゲン脂質中の分子種について詳細な分析を行なった。その結果、sn-1位、sn-2位ともに、主に炭素数16~20の飽和脂肪酸または一価不飽和脂肪酸から構成されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラズマローゲン生産菌の探索に有用な分析系を確立し、プラズマローゲン生産菌を多数見い出し、属レベルでの同定を行なうとともに、生産されるプラズマローゲンの分子種を詳細に分析し、細菌におけるプラズマローゲンの組成分布をある程度明らかにした。研究の進捗は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
・LCMSMSにより、定量的なプラズマローゲンの解析法を構築する。 ・生合成経路上の想定される中間体と蓄積菌を用いた休止菌体反応により生合成経路の推定を行う。脂質合成系阻害剤や、合成中間体として想定されるホスファチジン酸、リン脂質合成中間体、リゾリン脂質など様々な脂質や、通常蓄積しない奇数鎖脂肪酸や、多価不飽和脂肪酸、また、酸化系、還元系の経路からのプラズマローゲン生成の可能性も考慮し、各種長鎖アルコール、アルデヒドを基質として添加し、生成するプラズマローゲン組成・中間体から生合成経路を推定する。 ・ゲノムが公開されているもの、分子育種法が確立している種からプラズマローゲン蓄積株を選抜し、種々の条件下、蓄積時と非蓄積時のオミックス解析を行い、生合成に関与する遺伝子群、酵素群を明らかにする。 ・生合成経路推定解析、オミックス解析、ランダム変異解析、破壊遺伝子相補解析情報を統合し、生合成の関与するシグナル伝達系、転写因子、また、関連酵素群と生合成経路を明らかにする。また、鍵酵素であるアルケニル基生成に関与する酵素群の大腸菌による発現・精製を試み、先の検討で想定した生合成経路の中間体を活用し酵素の特徴づけを行う。さらに、解析対象の微生物と同属のプラズマローゲンを蓄積しない菌を対象に、プラズマローゲン生合成関連遺伝子群を導入し、プラズマローゲン蓄積能の付与を試みる。
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