研究課題/領域番号 |
17H05028
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
黒木 勝久 宮崎大学, 農学部, 助教 (20647036)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | プロスタグランジン / 硫酸化 / グルタチオン化 |
研究実績の概要 |
本年度は、(機能解析1)腸絨毛形成における機能解析と(機能解析2)腸管免疫における機能解析を行った。(機能解析1)では、シクロペンテノン型プロスタグランジンに加えエイコサノイドの過酸化代謝物の酵素学的な代謝解析とアポトーシス作用、代謝酵素による抗アポトーシス作用を解析した。初めに、酵素学的な解析の結果、4-ヒドロキシノネナール、4-オキソノネナール、マロンジアルデヒドが硫酸化を受けることが明らかとなった。さらに、ヒトの肝臓がん細胞株でも解析した結果、やはり硫酸化による代謝を受けていることが分かり、ヒトの酵素も代謝を担うことが示唆された。また、質量分析計を用いて代謝物を解析し、スルホン基の転移がなされていることを確認した。さらに、SULT7A1過剰発現細胞を用いた解析から、3種類のa,b-不飽和アルデヒドいずれも細胞内の代謝過程において硫酸化を受けることが想定された。そこで、シクロペンテノン型プロスタグランジンである15d-PGJ2に加え、3種類のa,b-不飽和アルデヒドによる細胞障害を検討した結果、4種類の中で4-オキソノネナールに最も強いアポトーシス作用があることが分かった。また、SULT7A1やGSTsを過剰発現させた細胞を用いた解析から、硫酸転移酵素やグルタチオン転移酵素には4-オキソノネナールによるアポトーシスから細胞を保護する機能を持っていることが想定された。(機能解析2)では、PGA2のグルタチオン体と硫酸体の受容体に対する作用解析を細胞を用いて行った。現在は、その作用が免疫細胞に与える影響を解析している。また、in vivoノックダウン実験に向け、SULT7A1安定発現株を作成し、SULT7A1発現を効率よくノックダウンするsiRNAを見出すことができた。また、動物実験計画の承認が得られ、動物実験の予備実験中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(機能解析1)腸絨毛形成における機能解析実験で当初予定した計画以上の実験を遂行することができた。当初の予定通り、エイコサノイドの過酸化代謝体の中から、硫酸化による代謝を受ける化合物を見出すことができた。さらに、当初予定していなかった代謝物の構造も明らかにすることができた。エイコサノイドの過酸化代謝体の細胞内硫酸化による代謝も当初予定通り遂行できた。当初の予定にはなかったが、SULT7A1以外の酵素による硫酸化代謝を検討した結果、SULT7A1を発現していない細胞でも硫酸化による代謝が行われていたことは大きな発見であり、更なる解析を翌年度以降、継続することにした。エイコサノイドの過酸化代謝体のアポトーシス効果も当初の予定通りに解析することができた。抗アポトーシス実験に関しては、ノックダウン実験を行う予定であったがSULT7A1を発現する株化細胞を見出すことができなかったことから、過剰発現させた細胞を用いた解析に移行した。機能解析2)腸管免疫における機能解析では、少し計画に遅れが生じた。PGA2の代謝体の作用解析では、再試験の結果EP4に対する作用が確認されたため、その作用確認の追加実験を行った。また、in vivo-knock down実験は、実験室などの施設や動物実験計画の承認を得るのに時間がかかり、十分な試験を行うことができなかった。但し、その下準備としてノックダウンに利用するsiRNAの検討は行うことができた。以上のことを踏まえ、予定以上に実験計画を膨らまし行うことができた一方、動物実験が遅れていることを考慮し、進捗状況・達成度はやや遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、(機能解析1)腸絨毛形成における機能解析と(機能解析2)腸管免疫における機能解析のin vitro培養細胞実験を行うとともに、in vivoノックダウン実験を行う。 <in vitro培養細胞実験> (機能1):腸絨毛形成における機能:エイコサノイドの過酸化代謝体であるa,b-不飽和カルボニル代謝のSULT7A1による酵素学的解析、特に反応速度論的解析を行う。また、ヒトSULT酵素による酵素学的解析(基質特異性と反応速度論的解析)を完了させる。 (機能2):腸管免疫における機能:調製した15d-PGJ2硫酸体及びグルタチオン体、PGA2硫酸体及びグルタチオン体の作用を免疫細胞(RAW264.7やJurkat細胞等)を用いて解析する。具体的には、その免疫細胞に対する作用をサイトカインなどの遺伝子発現及びタンパク質発現レベルで評価する。また、作用を網羅的に評価するため、プロテオミクスを用いた解析も検討する。 <in vivoノックダウン実験> ・ノックダウンマウス作製:SULT7A1特異的siRNAを用いたノックダウン条件(投与量、投与方法)の検討を行う。ノックダウン効率は、SULT7A1抗血清を用いたウエスタンブロッティング法による行う。遺伝子特異的siRNAによる標的遺伝子のノックダウン効率を確認後、腸柔毛細胞や腸上皮細胞の形態観察のほか、サイトカインなどの遺伝子発現やタンパク質発現に与える作用などを評価する。SULT7A1に加え、グルタチオン転移酵素(GSTA1やGSTP1)特異的なsiRNAを用いたノックダウン実験も同様に行い、各代謝酵素の個別遺伝子ノックダウンの作用を比較解析する。
|