研究実績の概要 |
腸管免疫における機能解析をin vitro培養細胞実験とin vivoノックダウン実験の両方向から実施した。培養細胞実験では、プロスタグランジン硫酸体のサイトカイン発現に対する作用を詳細に解析した。炎症が起きていないLPS未刺激下では、PGE2とPGA2は、IL-1b, IL-10, COX2の発現を上昇させた一方、IL-6の発現減少が確認された。一方、その硫酸体は、IL-1b, IL-10, COX2の発現には影響しないが、IL-8, TNFa発現を強く減少させた。この結果から、PGEA2硫酸化には、PGE2やPGA2がもつサイトカイン発現誘導作用を無効化させ、IL-8やTNFaの発現を抑制することが想定された。次に、炎症時を想定したLPS刺激下では、未刺激時とは異なり、IL-1b, IL-10, COX2の発現を増強させた。さらに、IL-8やTNFaの発現も増強させた。以上の結果から、比較的炎症反応が少ない状態では、PGA2硫酸化はサイトカイン発現を負に制御しているが、ひとたび炎症反応が起こると、そのサイトカイン発現を増強させるという、特異な機能があることが想定された。 in vivo実験では、SULT7A1遺伝子ノックダウン(KD)によるサイトカイン発現への影響を詳細に解析した。その結果、SULT7A1のKDは12指腸と小腸におけるTNFaとCOX2発現を優位に上昇させた。さらに、同様な結果をGST遺伝子KDでも確認した。このことから、シクロペンテノンの硫酸化とグルタチオン化は、腸管における炎症性サイトカインの発現を抑制し、炎症を抑えることが想定された。次に、マウス小腸から、プロスタグランジン代謝物をLC-MS解析した結果、PGE2の代謝物であるPGA2が多く検出され、その硫酸化代謝物の検出にも成功した。このことから、硫酸化は腸管におけるPGE2代謝とその機能を制御することが想定された。
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