一辺10ミリメートルの気乾木材および各種プラスチック材料を組み合わせて直径100~150ミリメートル程度の比較的大きな断面積かつ一様でない密度分布を持った試験体を作成し、これを2種のX線CT装置に供し、いくつかの管電圧といくつかの各種金属フィルタを用いてCT断層像の輝度値分布と密度分布の関係を比較した。試料条件によっては特定の厚さをもった特定の金属フィルタの使用が密度分析結果の妥当性を向上させることがあることが明らかになった。今後はこれらの方法の妥当性をより詳細に検討する必要がある。
木材単板に含浸させた寸法安定化処理剤(含浸フェノール)および木材保存剤(銅系薬剤)の分布測定へのX線CTの適用可能性の検討を実施した。いずれの成分もX線CTにより木材内部における分布状況を三次元的に可視化することが可能であることが示された。前者は含浸木材単板の内部に概ね均一に含まれていることが確認された一方、後者は含浸木材単板の表面にしか含まれていないことが確認された。
総じて、木質系建築材料中の含水率分布の二重エネルギー測定の適用可能性が示唆されたほか、接着剤の三次元濃度分布の計測への応用可能性についても示唆された。木材の道管や裏割れ等の空隙に浸透して固化した接着剤なども、造影剤の添加や重元素による化学修飾をすることなしに可視化できることが示された。
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