研究課題/領域番号 |
17H05033
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
甘糟 和男 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (80452043)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サクラエビ / 音響水産資源調査 / 計量魚群探知機 / ターゲットストレングス / 理論音響散乱モデル / 密度比 / 音速比 / 広帯域送受波器 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,広帯域音波を使用した計量魚群探知機によるサクラエビの資源量調査手法を開発することである。そのために,令和元年度は以下の3項目について研究を行った。 1)小型広帯域送受波器を使用したターゲットストレングス(TS)スペクトル測定システムの構築:測定誤差の原因であった背景雑音を軽減すべく,市販のアングル型ゴムを吸音材として水槽底面に敷き詰めた。これによりTSが既知の標準球による送受信系感度較正が正確に行えるようになった。さらに,TSが理論的にわかる銅円筒などを対象とする検証実験を行った結果,実測値と理論値が一致し,測定方法が正しいことを確認した。生きたサクラエビのTSスペクトル測定にも初めて成功し,本システムの有効性を確かめた。以上より,測定システムは完成した。 2)理論音響散乱モデルに必要なサクラエビの密度比・音速比の測定:密度比は定期的に生きたサクラエビを採集し,Density bottle法による測定を行ってきた。その結果,密度比に季節変化があることが示唆された。正確な資源量推定を行う上で重要な知見である。音速比は,測定誤差を軽減するためTime-of-flight法の測定システムを改良した。しかし,今年度は十分な数の生きたサクラエビを採集できず,測定が行えなかった。今後は,TSを実測し,理論音響散乱モデルによって音速比を逆推定する予定である。 3)広帯域計量魚群探知機とフレームトロールを使用したサクラエビ群集の観測:駿河湾焼津沖における調査を9月下旬に東京海洋大学練習船神鷹丸で実施した。一昨年度と同じ調査海域であったが,サクラエビらしきエコーがほとんど見られなかった。夜間に行った生物サンプリングでもサクラエビはほとんど採集できなかった。漁船,県の調査船でもサクラエビのエコーが見つからないことが言われており,昨今の資源状態の悪さを反映している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十分な数の生きたサクラエビが採集できないため,理論音響散乱モデルに必要なサクラエビの音速比の測定に遅れが見られる。しかしながら,TSスペクトル測定システムが完成したこと,さらにこれを用いてTSを実測し,理論音響散乱モデルによって音速比を逆推定することが可能になった。このアプローチは多くのサンプルを必要とせず,今後は実験が行えると考えられるので,おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
理論音響散乱モデルに必要な音速比は,完成したTSスペクトル測定システムによってTSを実測し,音速比を目的変数とした理論音響散乱モデルによって逆推定していく。これにより,モデルに必要な音速比,密度比,形状(別途,明らかにした)をそろえTS推定を可能とする。さらに遊泳姿勢角の情報が必要だが,これは一昨年の調査で得られたエコーデータおよび体長組成データを使用し,音速比の逆推定と同様にモデルで逆推定する。最後にモデルでエコー判別基準を調べ,実際の調査で得られたエコーデータおよび生物サンプルからその妥当性を検証していく。モデルによるTS推定結果はエコーデータからの体長推定にも応用していく。本年度は最終年度であるので,得られた研究成果を総括し,計量魚群探知機によるサクラエビの資源量調査手法を提案する。
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