本研究の目的は、広帯域音波を使用した計量魚群探知機によるサクラエビの資源量調査手法を開発することである。そのために、2020年度は以下の3項目について研究を行った。 1)理論計算によるTSスペクトルの決定:理論計算に必要なパラメータは、密度比、音速比、形状、遊泳姿勢角である。これまでに形状、密度比について明らかにした。2020年度は音速比と遊泳姿勢角を明らかにした。1-1)音速比:音速比を目的変数としたTSスペクトルの理論計算を行い、2019年度末に実測したTSスペクトルと比較して、ベストフィットする音速比(約1.01)を逆推定することに成功した。新たなTSスペクトルの実測は行えなかった。1-2)遊泳姿勢角:遊泳姿勢角を目的変数としたSVスペクトルの理論計算を行い、2018年度の乗船調査で実測した38、70、120 kHzにおけるSVと比較して、ベストフィットする遊泳姿勢角(約27度)を逆推定することに成功した。 2)エコー判別基準の決定:2018年度の乗船調査で得られたエコーデータを解析し、サクラエビ群集のエコーの判別基準を明らかにした。判別基準には2周波間の体積後方散乱強度(SV)のデシベル差を用い、70 kHzと38 kHzのSV差は約4 dB,120 kHzと38 kHzでは約5 dBであることがわかった。 3)現場観測と体長推定手法の検討:9月下旬に静岡県焼津沖および吉田沖で実施し、広帯域音波によるSVスペクトルの現場観測に初めて成功した。生物サンプリングは行えなかったため体長推定手法の検討や、1-2)、2)へ利用することはできなかった。 4年間の研究成果より、計量魚群探知機によるサクラエビの資源量調査の実現に目途が立った。
|