研究課題
2017年度にナイロビ市(ケニア)で行なった広範囲の文献レビューと試験的なフィールド調査に続き、2018年度はアフリカの都市における食遷移の状況を把握するために広範囲にわたる世帯調査を行った。調査内容には、現在と過去の食物の好み(食物の種類や量を含む)や食物の変化の理由、調査世帯の基本的な社会経済的特徴を盛り込んだ。さらに、調査した世帯の無作為化の適用性を確認するため包括的なサンプリング手法を作成し、この手法を用いアクラ市(ガーナ)とナイロビ市において、各都市それぞれ600から700に及ぶ世帯調査を行った。これらの一連の調査活動は食生活のパターンとその駆動因を導き出すために使用されるデータを収集するために必要である。2017年度の文献レビューの補完作業として、アフリカの都市における食遷移に関する既存の文献を更に探究する目的で、体系的な文献レビューの手法を作成した。この作業は本プロジェクトの結果を広範囲の文献に位置づけるために重要であると思われる。2018年度の研究実績として特筆すべき点は、清潔な料理用コンロの汎用と食遷移との関連性について、ケニアのステークホルダー(地元の関係者)の認識について分析を行ったことである。分析はステークホルダーである専門家26人との面接の結果を質的分析する手法で行われた。分析の結果は、報告書として作成し、査読有の学術誌に論文として提出された。この作業により、エネルギーの利用の変化(木炭から電気へ)と食遷移との関連性が示され、この問題がケニアで調査すべき重要な課題であることが認識された。
3: やや遅れている
予算の削減により当初計画していた全ての都市でのデータ収集を2018年度内に行うことができなかった。そのため未調査の都市でのデータ収集は2019年度に行う予定である。調査の遅れの補完として、2017年度にナイロビでの実験的フィールド調査で収集したデータをより深く分析することに焦点を置くこととした。エネルギー利用の変化、料理用コンロの使用と食の変化との関連性についての徹底的な調査を行い、その結果4本の査読有の論文を作成した。
2018年度は、マラウィのリロングウェ市とモザンビークのマプト市において、各都市約600の広範な世帯調査を行う予定である。調査には2018年度にナイロビとアクラで行った調査で使用したものと同じ質問票とサンプリングの手法を用いる。異なる都市からの完全なデータセットを分析するために異なる分析ツールを用いる。また、膨大な情報量の分析結果を効率良くまとめるために、異なる視覚化ツールを考案する予定である。アクラ市では食遷移の駆動因と影響を理解するために、様々なステークホルダーとの専門家インタビューを行う予定である。インタビューの結果は世帯調査で得られたパターンを統計分析で説明するために用いる。出版に関しては、Springer社出版「Sustainability Challenges in Sub-Saharan Africa」というタイトルの2冊の本の編集作業を行う予定である。また、2017年度のナイロビでの実験調査で得たデータに基づく2本の論文(査読有)の分析の完成を目指す。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Renewable and Sustainable Energy Reviews
巻: 102 ページ: 285, 306
https://doi.org/10.1016/j.rser.2018.12.006
Sustainability Science
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http://www.gasparatos-lab.org/