研究課題
湖沼は重要な温室効果ガスであるメタンの放出源であるが、観測データの量と質の制限によりその放出量の推定には大きな不確定性が残されている。本研究では、大気へのメタン放出量が特に大きい浅い湖である諏訪湖を対象として、渦相関法を用いたメタン放出の連続測定をおこない、それを溶存メタン濃度や気象・湖内環境データ、培養実験データと統合的に解析することで、放出の定量化とその環境応答性を明らかにすることを目的としている。また、観測データを基にパラメータ決定や改良をした数理モデルを用いてメタン放出の将来予測を行う予定である。平成29年度には、渦相関法によるメタン放出量と気象・湖内環境の連続測定と定期的な溶存メタン濃度の観測を実施した。また、湖底堆積物中におけるメタン生成と湖水中のメタン酸化を明らかにするために、培養実験を実施した。データ解析から、以下のことが明らかとなった。(1)諏訪湖においては定常的にメタンバブルが放出しているエリアが存在し、そのエリアでは通常の10倍にも達するメタン放出がある。(2)メタン放出は夏季に大きく、冬季に小さくなる季節変化を示した。(3)溶存メタン濃度もメタン放出と同様に、夏季に高くなっていた。(4)メタン生成は温度と共に大きくなっており、さらに同温度下では夏季の方がメタン生成が大きくなっていた。(5)メタン酸化は温度が高く、メタン濃度が高いほど大きかった。(6)メタン放出量をバブルと拡散による放出に分離する手法を開発した。なお、上記(6)の成果については、現在、投稿論文にまとめて提出しているところである。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題で計画していた観測は順調に実施できている。メタン放出や気象・湖内環境の連続観測は最大限欠測の無いように実施しており、季節変化や日変化を明らかにするデータの取得ができている。溶存メタン濃度の観測も計画どおりの月一回の測定を実施しており、その季節変化が明らかとなっている。メタン放出量をバブルと拡散による放出に分離する手法を開発し、投稿論文として提出しているところである。また、当初の予定に無かったメタン生成と酸化の実験を実施し、諏訪湖のメタン動態の解明を進めている。
今後も予定通り計画を進めて、観測の継続をおこなう。また、メタン放出の環境応答性を明らかにし、論文にまとめる予定である。数理モデルによる諏訪湖からのメタン放出の再現性を検討し、観測データを用いたパラメータ決定やモデルの改良を実施していく予定である。また、夏季にはウプサラ大学(スウェーデン)の湖からのメタン放出を研究しているグループを訪問する予定であり、共同研究に発展させたいと考えている。
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関東の農業気象
巻: 43 ページ: 9-12