研究課題
湖沼は重要な温室効果ガスであるメタンの放出源であるが、観測データの量と質の制限によりその放出量の推定には大きな不確定性が残されている。本研究では、大気へのメタン放出量が特に大きい浅い湖である諏訪湖を対象として、渦相関法を用いたメタン放出の連続測定をおこない、それを溶存メタン濃度や気象・湖内環境データ、培養実験データと統合的に解析することで、放出の定量化とその環境応答性を明らかにすることを目的としている。また、観測データを基にパラメータ決定や改良をした数理モデルを用いてメタン放出の将来予測を行う予定である。令和1年度には、継続して渦相関法によるメタン放出量と気象・湖内環境の連続測定と定期的な溶存メタン濃度の観測を実施した。また、湖表層水中の溶存二酸化炭素濃度の測定も実施し、湖面―大気間のガス拡散モデルの検証を行った。データ解析から、以下のことが明らかとなった。(1)湖からのメタン放出は湖水温度が高くなるほど大きくなり、これは堆積物中でのメタン生成の温度依存により説明される。(2)連続的なバブルによるメタン放出は湖底での圧力が低くなると大きくなり、湖底での圧力がバブル放出への抵抗として働いている。(3)従来提唱されている湖面―大気間のガス拡散モデルでは諏訪湖のガス交換を表現できない可能性がある。なお、上記(1)と(2)の成果については、現在、学術雑誌に投稿中である。また、開発したメタン放出量をバブルと拡散による放出に分離する手法を諏訪湖の長期データに適用した結果を学術雑誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題で計画していた研究は順調に実施できている。メタン放出や気象・湖内環境の連続観測は最大限欠測の無いように実施しており、季節変化や日変化を明らかにするデータの取得ができている。溶存メタン濃度の観測も計画どおりの月一回の測定を実施しており、その季節変化が明らかとなっている。上記の結果は投稿論文にまとめて学術誌に投稿中である。それに加えて、当初の計画に無かった溶存メタン・二酸化炭素濃度の連続観測にも挑戦しており、シミュレーションモデル中のガス拡散サブモデルの検証を進めている。
今後も予定通り計画を進めて、観測の継続をおこなう。また、これまでに得られたメタン交換、溶存ガス濃度、培養実験データをもとにメタン交換シミュレーションモデルの改良に取り組み、論文にまとめる予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
Agricultural and Forest Meteorology
巻: 285-286 ページ: 107933~107933
10.1016/j.agrformet.2020.107933
Bulletin of the American Meteorological Society
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