ウシ卵管自発収縮を制御する機構を明らかにするため、ペースメーカーとなりうる細胞と平滑筋細胞の単離方法を検討した。収縮に必要な細胞内カルシウム変動について、培養平滑筋細胞を用いて以下の検討を行った。 1)組織において収縮を亢進するオキシトシンの影響を検討したところ、オキシトシン添加後1-2 分においてわずかにオシレーション頻度が上昇した。しかし細胞個々に解析すると、細胞によってオキシトシンへの反応が異なることが明らかとなった。オキシトシン受容体発現の有無や細胞周期との関係など、細胞の状態の違いを検討する必要がある。 2) 細胞間相互作用の有無を検討したところ、コンフルエント前 (<70%) とコンフルエントの状態でカルシウム変動周期を解析および比較したところ、コンフルエント状態において高頻度の周期を示す細胞が有意に増加した。このことから細胞密度の増加がカルシウムオシレーションの頻度制御に関与していることが明らかとなった。 3) 小胞体がカルシウム変動に関与するかを検討した。小胞体のカルシウム放出および取り込みにかかわるイノシトール3リン酸受容体と筋小胞体カルシウムATPアーゼを阻害したところ、一時的に変動が停止した。 以上より培養平滑筋細胞のカルシウム変動発生は小胞体由来であり、細胞密度が関与することも明らかとなった。また、培養細胞のオキシトシンに対する反応性が細胞によって異なることから、異なる役割を持つ細胞を分離できる可能性も確認できた。
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