研究課題
近年米国で発見されたD型インフルエンザウイルスは、ウシ呼吸器病症候群(BRDC)の患畜から高頻度でウイルス遺伝子が検出されることから、BRDCの原因ウイルスの一つである可能性が示されている。これまでに私たちは日本にもD型ウイルスが侵淫していることを初めて明らかにした。本研究では、わが国のウシやブタなどの家畜おけるD型インフルエンザウイルス感染の実態を大規模に調査し、そのBRDCとの関連性や、日本に存在するD型インフルエンザウイルスの生物性状を明らかにすることを目的とする。本年度はわが国の家畜におけるD型インフルエンザウイルス感染実態を明らかにする目的で、疫学調査した。血清疫学的調査では、日本で採取したウシ、ブタ、ヒツジ、ウマの血清についてHI抗体の検出を試みた。本年度に採取したウシ試料50検体で陽性個体はいなかった。その他のブタ、ヒツジ、ウマについてもHI抗体陽性個体はいなかった。また呼吸器病のウシの鼻腔スワブからRT-PCRによるD型ウイルスの遺伝子検出を試みた。本年度に採取した60検体についてはすべて陰性であった。これらの結果から、本年度はD型ウイルスの流行はほとんどなかったと考えられる。D型ウイルスのウイルス学的性状解析のために、リバースジェネテクスの開発を試みた。その結果、RNA polymerase Iを用いる系でD/Oklahoma/1334/2011ウイルスの作出に成功した。今後は様々な変異ウイルスを用いてウイルス性状を明らかにしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに、D型インフルエンザの疫学調査、D型ウイルス性状解析が進展したため。
当初の計画通りに今後も、わが国の家畜におけるD型インフルエンザウイルス感染実態の血清学的疫学調査、ウシのBRDC発症とD型インフルエンザウイルス感染の関連性調査、D型インフルエンザウイルスの分離と性状解析、およびD型インフルエンザウイルスの動物感染モデルの確立について研究を進めていく。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Journal of Virology
巻: 92 ページ: e02084~17
10.1128/JVI.02084-17
ウイルス
巻: 67 ページ: 161-170