研究課題
マスト細胞は脱顆粒を起こす細胞の中で唯一、脱顆粒後の細胞死が起こらず脱分化して増殖・再顆粒化する能力を有する細胞である。本研究は刺激を受けたマスト細胞の脱顆粒にいたるまでの詳細な過程および同時にはじまる修復・生存メカニズムを分子生物学的に明らかにすることを目的とする。通常マスト細胞は生体内局所で分化後静止期にあることから、これを反映する初代培養細胞として腹腔内マスト細胞を使用し、メタボローム解析およびマイクロアレイ解析による細胞内代謝・遺伝子発現制御の基礎情報を取得した。その結果メタボローム解析においては他の免疫細胞や腫瘍細胞で報告されている経路とは異なる特徴的な代謝経路の亢進を示唆するデータが得られ、マイクロアレイ解析ではその代謝に関連する酵素の遺伝子発現も高いことが確認された。同代謝経路に必要となる物質を含まない培地中では培養したマスト細胞が細胞死に陥ることも観察されたことから、その意義について次年度以降にさらに詳細な検証を行い、同経路を中心とする応答の細胞生物学・分子生物学的意義を明らかにする予定である。また脱顆粒の過程に関する解析では、骨髄由来培養マスト細胞において小胞体関連分子の活性抑制が脱顆粒において鍵分子となることを示唆するデータを得た。その中心的なメカニズムについても概ね解析できており、次年度他のマスト細胞株やヒトマスト細胞においても同様の機構が存在するか確認予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた網羅的解析による基礎解析、および脱顆粒制御メカニズムに関する解析が順調に進捗したため。
平成30年度は平成29年度の結果を受け、マスト細胞において特徴的に活性の高い代謝経路の活性化と意義を骨髄培養マスト細胞やその他マスト細胞株も用いて詳細に検討する。特にその重要性が示唆された経路については脱顆粒反応がいかにその機序を引き起こすのか、分子レベルで詳細に解析することで脱顆粒後の細胞修復・再増殖に至る有効性を明らかにする。あわせて脱顆粒過程に関する解析については種を超えた普遍性の有無を検証することでアレルギー等マスト細胞関連疾患における治療標的としての有用性を検証する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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