研究課題/領域番号 |
17H05046
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60467058)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 精巣テラトーマ |
研究実績の概要 |
精巣テラトーマは内胚葉・中胚葉・外胚葉の三胚葉成分の混在する精巣腫瘍の一種である。腫瘍の原発となるのは胎児期の精巣における生殖細胞であり、精子への分化経路から逸脱して初期胚様の細胞へと転換し、分化多能性の精巣性テラトーマを形成する。しかしながら、生体内でこのような現象が起こる分子機構については未だに不明である。申請者は、マウス始原生殖細胞におけるRNA結合タンパク質Nanos3の欠損が、129系統マウスにおいて精巣テラトーマの発症を誘発することを見出していた。今年度は、Nanos3の結合タンパク質であるDead end1とのダブルヘテロ欠損129系統マウスにおいて精巣テラトーマの発症率が上昇することを見出した。また、Nanos2欠損にDead end1のヘテロ欠損を導入すると、同様に精巣テラトーマの発症率が上昇することを見出した。 一方で、Dead end1は自然発症変異Terの原因遺伝子として同定されたが、TerがDead end1のnull変異なのか、それとも、Dead end1の短い変異タンパク質を生成するのかは不明であった。そこで、我々が作成したDead end1欠損マウスとTer変異マウスの表現型を比較したところ、ほとんど同一であった。また、我々の作成した抗体によってDead end1の短い変異タンパク質は検出できなかった。以上のことから、TerはDead end1のnull変異であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はNanos3とDead end1の精巣テラトーマの発症制御における遺伝的相互作用を解析し、ダブルヘテロ欠損マウスにおいてテラトーマの発症率が上昇することを見出した。一方で、Nanos3のファミリータンパク質であるNanos2の欠損マウスにDead end1ヘテロ欠損を導入するとテラトーマの発症率が上昇することを見出した。Nanos2、Nanos3は共にin vitroとin vivoでDead end1と結合することが明らかになっているため、これらの複合体がテラトーマの発症を制御することが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
Nanos3の欠損マウスは大部分の始原生殖細胞がアポトーシスによって死滅するために、RNA-seqなどの解析が困難であることが明らかになった。そこで、2020年度は薬剤誘導型Dead end1条件付き欠損マウスを用いて、胎仔精巣における生殖細胞が多能性のembryonal carcinoma(EC)細胞へと転換する分子機構について解析する。本マウスは胎生10日目にタモキシフェン投与によってDead end1を欠損させることができる。その場合、多くの生殖細胞が残っているために、大量の細胞を必要とする解析を行うことができる。
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